本澤二郎の「日本の風景」(5756)
<みっちゃんとみどり寿司>
人間は何かに怯えながら生きる動物なのか。それにしても戦前の日本を象徴する「神の国」信仰は、善人には気味悪い。その映像を昨夜見た。例によって白い歯を見せびらかしながら厚化粧のおばさん、背後に緊張の面持ちの防衛相が従う、それは異様な雰囲気を醸し出していた。そう伊勢神宮という朝鮮半島から渡ってきた原始宗教の本山での異様な風景は、祭政一致の日本を内外に印象付けている。

多数の無神論者も行き場がないではないか。個人がそれぞれの信仰を、個人レベルで行うことに対して、近代法は肝要である。公人が公費を使って、公然と内外に喧伝する姿は、容赦なく否定している。安倍もそうだったが、高市も同じ違反者だ。野田も同じである。政治に宗教を持ち込む勿れ!戦前の過ちを繰り返そうとしているのか。平和憲法は禁じている。自民党も政治屋の面々は、異様さを感じないのだろうか。

筆者は5年越しの夢がかなって、JR津田沼駅近くの人気の寿司店に「もつ焼き本ちゃん」の主夫妻と飛び込んだ。2日から寿司を握っていた「みどり寿司」夫妻の特別に握ってくれた高級寿司とビール・日本酒で浮かれ、久しぶり時間のたつのも忘れてしまった。
みどり寿司の主人・本澤正行君は、幼ななじみのみっちゃんの弟。41年も寿司を握るベテランだ。木更津市の山奥の茅野村から飛び出しての、苦節20年の成果に違いない。みっちゃんはいない。20年も次男が面倒を見た母親もこの世を去った。茅野村には「神の国」に騙されて戦場で散った形だけの墓地は、今も存在する。
わが父も二人の弟も無事に帰還したが、みっちゃんの父親はとうとう帰ってこなかった。彼も戦争遺児である。戦争遺児の戦後は、悲惨の2字が体全体にまとわりついている。

「私は関係ない、何もしていない」と筆者に明かした高市早苗は、首相として伊勢に「神の国」首相として参拝したのだが、彼女は権力の魔性となって、泉下の日本人と外国人数千万人の命など眼中にない。

<二人で30部の産経新聞配達した中学生の思い出は消えない>
早朝の5時ごろ、みっちゃんの家の前で口笛を吹く。しばらくすると、家の電気がつく。冬の季節は、母親が近くの山から集めた枯れ木を台所で燃やす。二人の中学生は、両手を温めて自転車で5分ほどの久留里線馬来田駅に、まだ発刊したばかりの産経新聞を受け取る。今は不明だが、当時は宣伝のチラシをたった15部の新聞に押し込んで、それから配達だ。二人合わせて30部。
安い新聞で読者を集めた人物は親類の正志さん。予科練の生き残りだ。銀杏の大木のある広場で遊んでいるところを、正志さんにつかまって「二人ならできる」と判断した。風邪をひいても休めない。この時はつらかった。今の産経は右翼新聞に変身して恥じない。

われは父親として、次男が独学で合格した早稲田大学に入ると、即座に新聞配達生活を強要した。これは間違いだった。貧しさが背景にあったとはいえ。日本に限らないが、貧困が人々の運命を変える。
やくざの道に入って、そこから国会議員になった人物が房総半島にいた。みっちゃんは上京して職人になって、帰省して母親と暮らす。その後、京都の娘さんと結婚して二人の娘が出来たが、戦争遺児の厳しさは第三者にはわからない。家庭生活も乱れて離婚。50歳まで生きられなかった。
みっちゃんの姉の千恵子さんは美人で鉄道員と結婚したが、やはり離婚して水商売。「自分の店を持ちたい」という夢は果たせず、90歳で施設に入った、と正行君が教えてくれた。
どう見ても戦争遺児には硝煙による貧困がついて回る。円満な家庭を持つことは容易ではない。その点で末っ子の正行君は、みどり寿司で見事成功を手にした。

やくざ強姦魔の手にかかった「木更津レイプ殺人事件」被害者の美人栄養士も、初恋の人との再婚を目の前にして命を奪われた。そういえば日本では、戦争未亡人や戦争遺児の戦後の厳しすぎる人生についての統計
がない。「神の国」にとって不都合なのだ。盲目の為政者は、また同じ過ちを繰り返す。

<重税国家日本返上急務=中小企業は倒産>
大手企業・財閥は円安でぼろ儲けすることが出来る。トヨタをみれば一目瞭然だ。不公平な税制による。他方で、重しは中小企業に。家族経営で細々と生きるしか方法はない。
何とかせよ、が庶民の怒りの願望である。
財閥には抜け道がいくらでも容易されている。脱税も当たり前だ。
それにしても、ヒロヒトの伊勢神宮に集まる政治屋集団には反吐が出る。庶民の暮らしなど無縁なのだから。官僚腐敗はとうとう腹黒い農民・農協を誕生させた。不公正な社会には、亀裂が生まれる。格差が拡大する。危うい日本と「神の国」を掛け合わせるとどうなるか?わかりきっている。

<JR津田沼駅のホテルメッツは最高>
昔は気づかなかった千葉動労のストに怒っていたが、今は違う。そこからJR東労組のリーダーが誕生した。松崎明が懐かしい。彼は実兄を戦場で亡くしていた。彼の平和主義は、いまも生きているからすごい。連合の中で唯一の平和労組だ。
いまいるのはJR津田沼駅のホテル。「もつ焼き本ちゃん」の主が用意してくれたものだが、このホテルのすごさは、外の騒音が全く届かない点である。二人で泊まると便利だ。

硝煙を消すための戦いはまだまだ続くことになる。戦争遺児のみっちゃんの思いに応えられる人間になりたいものである。
2026年1月6日記(茅野村の仙人・日本記者クラブ会員)