本澤二郎の「日本の風景」(5579)
<言論こけると政治腐敗が蔓延する日本>
人類は政治の独裁を承知しているが、言論の独裁について知らない。財政危機に直面したトランプの独裁的暴走に対して、米国の言論界は厳しい視線を投げかけて、一瞬たりとも休息させない。権力監視の米国政治は、かなりダイナミックで評価できる点も少なくない。政権内で健康・環境派のロバート・ケネディJrの存在は、頼もしい限りだ。経済人のイーロン・マスクの、快刀乱麻の財政の無駄大削減と、トランプの放漫予算に抵抗する行動も、観客席を沸かせてくれる。
日本は全く違う。言論の自由はないに等しい。こわい内務官僚の正力松太郎は、敗戦後の読売経営を独占し、原子力発電を軸に改憲と大軍拡で、戦前の国家主義報道に徹した。核兵器国家としての軍国主義復活にかけた。
正力はそのために国民を裏切って、米国諜報機関のCIAの手先になって、日本を反共の砦にしてゆく。A級戦犯の岸信介の神道極右グループとも連携し、日本テレビと野球(巨人)の3本の矢で、無知な国民を戦前体制へと引きずり込んだ。正力の手先が渡辺恒雄。彼は驚く勿れ、読売新聞という言論の武器を使って、保守政権のお先棒を担いで、改憲論を条文化し、それをぶち上げた。
その震源地を探す旅に出た筆者は、1993年3月に1か月間かけてアメリカ全土を取材「アメリカの大警告」(データハウス)を書いて、渡辺NOを突き付けた。民主党のクリントン政権が発足したばかりのころだ。クリントンは戦争反対の国内世論に押されて政権を担当し、衰退した米ビッグ3の自動車の再建と大軍縮による財政立て直しに取り組んでいた。アメリカン・リベラルが公然と開花していた。
多くの日本人は信じられないだろうが、中曽根・国家主義で勢いずく軍拡の嵐について、米軍の制服組は「日本はまたアメリカと戦争するつもりか」と強く反発した。ワシントンには、まともな勢力が軍部にも存在していたことに安堵した。
渡辺が期待する日本大軍拡への期待は皆無だった。宇都宮徳馬の弟子にとって、それはうれしい悲鳴となった。
「アメリカの大警告」の表紙には「小沢一郎と読売新聞の野望に警戒を強めるワシントン」という率直な見出しも載せた。案の定、渡辺は買い占めて店頭販売を抑えた。渡辺という正力の弟子との闘いの始まりとなった。以来、左翼から右翼に転向し、恩師を裏切った渡辺の動向に注目してきたのだが、彼の政治利用の暴走は止まらなかった。
最後は自民党の総裁選に関与し、閣僚人事まで手を回した。あまつさえ日本記者クラブや日本新聞協会も抑え込み、権力監視という言論人の正義の牙さえ切り裂いた。発行部数と政界人脈で首相の座を自在に転がす野蛮な、倫理性を喪失した独裁的言論人の蓄財は、計り知れない。
朝日新聞の阪神支局襲撃事件が、朝日を沈没させ、日本の言論界を牛耳ってしまったのである。「敵なしの渡辺」誕生である。
日本国民も政治家も経済人も知らない日本の言論の正体なのだ。宇都宮が健在なころに書くべきだったが、そのころは力不足を否めなかった。
日中友好派同士で「朝日の偏向報道にも困った。読売の方が先に目を覚ますのではないか」と話し合っていたころだ。読売どころか朝日新聞の右傾化が、識者の不安材料だった。思い出すと、朝日OBの西園寺一晃のことを思い出す。彼は西園寺公望の孫で、敗戦後家族と北京に渡った。大学は北京大学を卒業した、中国事情に精通した第一人者で知られる。今どうしているか。息子の医療事故死と妻の死で、それまでの無数の人脈を切り捨てた不甲斐ない仙人ジャーナリストも、過去を思い出すと涙が出てしまう。
<読売の正力・ナベツネが悪魔に魅入られ、朝日がカルトに襲撃され、NHKが財閥に屈した日本言論界の悲劇が現在も>
新聞人でありながら、読売を無視と監視という矛盾した視線でやり過ごしてきた非力な言論人。というよりも、言論人としての足場を崩壊させられた哀れな人間は、いまやくざ暴力団と彼らによる核汚染ごみ事件に翻弄されている房総人でしかない。
本来であれば、袖ヶ浦市の核汚染ごみ不法投棄事件は1日で解決できる小さな課題である。しかし、電通と一体となった体制新聞の読売は、既に60年以上前にワシントンの配下となって、言論界を封じ込めてしまっていた。
それでも無知で愚かな日本人は、現在も多い。読売の1000万部はうそだが、それでも500万部前後の、日本一の発行部数を誇っている。新聞の威力は、映像以上である。活字の力だ。しかし、それを悪事に使うと、途方もないものに拡大する。
それを読売は、ずっと継続してきた。今回のトランプ改革によるダメージは大きいはずだ。朝日はどうか。NHKは悪法を盾にして国民いじめに専念している。筆者は当の昔にテレビを廃棄した。「NHKを破壊する政党」に引っかかるバカも少なくない。小泉純一郎もそうだった。「自民党をぶっ潰す」は嘘だった。
読売に対抗するはずの朝日新聞・テレビ朝日は、いまだに読売・渡辺化を抜け出せないでいる。新聞を知らない愚かな市民のお陰で、今も存続している。暴力に屈した朝日の復活は、常識的にはありえない。そして世論操作の最大の武器であるNHKは、渡辺の工作で財閥人事に組み入れられてしまった。NHK労組もいい加減すぎる。カネで動く政治と言論である。
<権力監視機能喪失の罪は万死=円激安政策(アベノミクス)で国民生活疲弊>
日本から新聞が消えてしまった。しかし、愚かすぎる日本人は現在も気付こうとしない。この記事は、したがって本澤の遺言である。言論がこけてしまうと、国民も呼吸できなくなり、窒息死する。
権力の監視のない社会では、暴力と腐敗が蔓延する。それが今の日本の姿である。台湾に血税を投入して半導体製造をする日本は、中国の一地域に届かない。国民生活はアベノミクスによる超物価高で泣いている。不買運動に専念せよ、である。
失政は政権の交代を約束する。この点でも、韓国の方がはるかに民主主義が定着している。
80年前を総括すると、歴史を共有する日本に反対する勢力が、日本政府を操縦している。おかしいと思わない日本人が、今も存在する。日本人でありながら、法治の根本である日本国憲法を知らない人間が、国会議員になっている!小選挙区制は岸の遺言だった。
<世紀の参院選=蓋を開けると右翼政党花盛り>
間もなく3年に一度の参院選挙の投開票日だ。いかに投票率を下げるかに、政権与党の自公は必死だ。期日前投票による投票用紙のすり替えなど違反が心配だ。ムサシの自動開票は問題になって大分経つが、解決されていない。手作業開票をなぜしないのか。
政権交代が叫ばれているが、候補者は大乱立。これも政権存続の切り札なのか。極右カルト政党の善戦は分かっている。
言論が死ぬと政治はこけて、不正腐敗が日本社会にこびりつく。
2025年7月9日記(茅野村の仙人・日本記者クラブ会員)
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