本澤二郎の「日本の風景」(5297)
<上川陽子と高市早苗の落差は靖国参拝でくっきりと露呈>
未明にネットを開いた。外交問題で日本がアジア・太平洋で生きていくカギは、80年前の侵略戦争とどう向き合うべきか。一番真っ当な人物は、現在外相の上川であることがはっきりした。
首相の靖国参拝の有無は、日本が国際社会に打って出る際の核心的な外交原則である。公人による戦前の国家神道の後裔である靖国神社参拝は、侵略戦争を正当化するため、日本の外交的孤立を約束するだろう。
特に日本の植民地支配による民族的屈辱を強いられた朝鮮半島の人々の怒りは必至となる。1000万人以上の死傷者を出した日中戦争の当事国である中国の外交原則とも激突する。日英米戦争のワシントンやロンドンとも対立する。侵略戦争を美化・正当化する靖国参拝は、日本外交の大中心軸として否定される。ましてや日本国憲法の政教分離にも違反する。公人による特定宗教参拝は、厳しく禁じられている。
<特定宗教施設でない千鳥ヶ淵の戦没者墓苑参拝が正しい=欧米の政治指導者の立場>
各国の戦死者を慰霊する施設は、特定の宗教施設ではない。非宗教施設は当たり前だが、仮に特定の宗教施設だと、国内の他宗教との対立を生じるため、無宗教施設が常識化している。特に侵略戦争で無数の犠牲者を出している日本の靖国では、正当化する大義はない。施設維持に自治会費など公的な資金を強引に引き抜いている現状は、神道を特別扱いするもので20条違反だ。
現に国際社会に配慮して、非宗教の国立の施設を福田康夫らまじめな政治家は、必ず実現しようとした。
繰り返す靖国参拝で小泉内閣は国際的に孤立した背景の下で。官房長官の福田は、元首相の国際通の宮澤喜一の意見などを聞いて、非宗教施設建設に走った。この時の推進メンバーの一人が上川陽子だった。当時、彼女の口から聞いた記憶がある。
今回の総裁選で、堂々と神道の靖国参拝を否定して、無宗教の千鳥ヶ淵墓苑こそが参拝する場所だと、正論を吐いていた。
9人の総裁選候補のうち、国際派の第一人者が上川で、二番手が林芳正。共に宏池会育ちの政治家で、過去に目を閉ざす高市や加藤勝信と一線を画した。外交は感情ではない。優れて、政治が全面に出る。安倍や森喜朗の清和会の神道政治連盟の「神の国」という原始の時代錯誤の国家神道復活派でない。そういえば、上川には女性議員にまとわりつく「枕営業」のうわさは皆無である。
<宮澤喜一・福田康夫に学んだ上川の正論と森喜朗・安倍・松下政経塾の極右の皇国史観の高市>
憲法20条の政教分離・信教の自由は、戦争放棄の9条と共に連動して、日本政府が再び戦争を起こすことを100%拒否する最も大事な条文である。
靖国神社には「遊就館」という歴史観が存在する。これを目にした大平正芳の秘蔵っ子・加藤紘一は「戦争美化の遊就館のことが国際社会に知れ渡ると、日本外交は破綻する」と警鐘を鳴らした。加藤のこの発言記事を今も記憶している。加藤邸の火災と関係しているだろう。
言及するまでもなく国際社会の政治指導者は、決して靖国神社参拝をしない。思い出すと、先輩記者の田中角栄秘書の早坂茂三に土下座して中曽根康弘支援を懇願した読売の渡辺恒雄のやくざ暴力団方式に納得したが、その中曽根さえも靖国参拝を一度きりでやめた。その点で、繰り返し参拝して日中関係を破壊した小泉純一郎の政治責任は重い。倅もだめだ。
福田康夫のもとで、無宗教の戦没者施設建立計画に参加した上川は、国際政治の本流を歩いてきていることが分かる。福田は戦後外交の第一人者で、政界随一の英語使いで漢籍に通じた宮澤に師事した。吉田茂の保守本流の外交に徹した福田の日中友好活動は、大いに評価されよう。
<過去に目を閉ざす盲目の人物に肩入れする麻生太郎>
笑えない事態が起きている。上川擁立に人肌ぬいだ利権政治屋の麻生太郎が、総裁選直前に高市支持に回った。君子豹変である。信用されない麻生の政治経歴に自ら泥を塗った。
以下に上川発言を紹介すると、それは「お参りが政治的な文脈の中で語られる、これまでの状況は避けなければいけない。その意味で、外相としても総理としても千鳥ヶ淵戦没者墓苑にお参りに行くという形が、戦没者の御霊に心からの感謝を、そして平和への祈りを捧げることだと思っている」。
<靖国参拝派政権が誕生すると、日中激突と日本孤立を約束>
もっとも危険で日本破壊の可能性の高い高市を総裁に担ごうとしている森喜朗と神道政治連盟・日本会議の極右跋扈の日本政府に、本来であれば日本政治のバランサーである霞が関の恐怖が聞こえてきている。
歴史に蓋をし、学ばない盲目の人は、また歴史を繰り返す!
2024年9月27日記(茅野村の仙人・日本記者クラブ会員)
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