本澤二郎の「日本の風景」(4932)

<人間性不在の東芝企業の人権と倫理=再建は不可能か>

官民が総力を挙げて推進してきた東芝の株式公開買い付けで、株主の78・65%が応じたという。株主にも見捨てられた東芝の再建は可能なのか。


筆者は2010年4月7日に東芝経営の東芝病院で次男の尊い命を奪われた。無信仰の凡人ジャーナリストも、毎日次男の元気なころの早稲田大学時代の写真と向き合い、無反省・無謝罪の人間性不在の東芝を「許すまい」と心に誓っている。最近は非戦の日本人最初の主唱者・松本英子女史の上総の国望陀郡茅野村の生家近くに、正文のための小さな顕彰碑を建立し、東芝との戦いを被害者らしく振る舞って屈しない。人間は被害者となって、初めて人間らしくなるという事実を体得した。


思い出すと、こんなことがあった。反省も謝罪もしない東芝に対して、初めて怒りの刑事告訴をした。すると真っ先に読売新聞の警視庁詰めの社会部記者が、自宅に飛び込んできて、事細かに取材してくれた。しかし、一行も記事にしなかった。原発企業・東芝と読売新聞は「仲間同士」だった。いうところの偵察取材だった。


いま汚染ごみや有害廃棄物など約60万立方メートルを、やくざ系産廃業者が不法に投棄した千葉県袖ケ浦市林地区の水源地に、朝日新聞についで読売新聞も取材に入った。朝日は、放射能とは無関係な市議会のおぞましい議会の慣行を書いて逃亡してしまった。原発推進派の読売が記事にすれば、日本は天地がひっくり返ることになるのだが?


<ジャニーズの児童性虐待事件で表面化した人権と倫理>

報道によると、日本民間放送連盟(民放連)の遠藤龍之介会長(フジテレビジョン副会長)は、9月21日の記者会見で、ジャニー喜多川氏の性加害問題に関して、「過去にジャニー喜多川氏が行った数々の行為が、性加害であり、重大な人権侵害であるとの認識を、民放を含む多くのメディアが十分に持てなかったことは事実で、反省しなければならない」と述べた。


少しだけ民放連が覚醒したのだろうが、遅すぎて話にならない。ニューヨークでは、43兆円の戦争準備を開始した岸田文雄が、日本の首相として「核なき世界に30億円」というラッパを鳴らしたが、国連総会議場はガラガラで誰も耳を傾けなかった。歴史の教訓を忘れた日本政府に国際社会は笑っている! 

<経営陣・株主も正文の死に向き合わなかった東芝!>

「日本産業パートナーズ(JIP)などの国内連合は9月21日、東芝へのTOB(株式公開買い付け)が株主から78・65%の応募を集めて成立したと発表した。議決権ベースで66・7%以上の応募が成立の条件だった。東芝は年内にも非上場化し、経営再建を目指す。不正会計問題の発覚以降、迷走が続いた東芝の経営は転換点を迎える」と報じられてもいるのだが。「再生に一歩踏み出した」とも御用学者などは持ち上げている。本当だろうか。

現在は21世紀である。産業革命の時代ではない。「企業の人権意識」「企業倫理」「社会的責任」が強く求められている。これらの視点からいえることは、人の命に向き合ってこなかった暴利一色の東芝の再建計画は、まず不可能であると断じたい。技術だけの時代は終わっている。経営の眼目は、人間性のある経営陣と労働者の存在が不可欠である。2010年から何人の経営者が消えてきたであろうか。不正・腐敗の三井住友財閥を代表する製造メーカーの東芝の存在価値は、とうの昔に無くなっている。

致命的な医療事故によって患者の命を奪いながら、反省も謝罪もできないような東芝は、企業失格である。経営陣どころか親会社の三井住友財閥も、はたまた株主も、人間らしい人間ではなかった。

<武器弾薬に手を染めてきた軍需産業の人権意識の欠落>

次男の命を奪いながら反省も謝罪もしない東芝という企業を、洗濯機やテレビなど電化製品をつくる会社くらいにしか理解してこなかった。通産大臣の秘書官が「東芝は役所内で別格の存在だった」と教えられて、以後どんな会社なのか、関心を抱くようになった。

防衛官僚らがたくさん天下りしている事実に気付いた。東芝は武器弾薬を製造する怖い会社でもあった。人殺しのための武器を製造する人間は、人間らしい人間とはいえない。心がまともとは、到底思えない。平和軍縮派・戦闘的リベラリストの宇都宮徳馬の下で学んだことだった。「軍人は勲章が欲しくて戦争を好む」という真実に納得した。武器弾薬を作る人間、それを手にする人間を信頼できない。「なぜ子供を東芝病院に入院させたのか」という非難は甘受しなければなるまい。救急隊の指示だった。NOといえるわけがない。ごく普通の看護は保障してくれるだろうとの安直な考えだったことを、いま白状しなければなるまい。

いえることは、武器弾薬を扱う企業は、たとえ病院であろうが何だろうが、そこで働いている人たちの精神はまともではないのだろう。「誤嚥性肺炎、1週間の入院」に抵抗できなかった父親は、いまも猛省しきりである。

<東芝は日本有数の一番危険なプルトニウム原発メーカー>

次男の自宅介護のための体力づくりにと、妻からジム通いを求められ、それに従った。そこですごい友人ができた。確か日立を辞めた元キャリアの優秀な人物で、なんでも知っていた。311の直後だった。東電福島原発崩壊現場で働いている被ばく作業員の存在を教えてくれた。被ばく覚悟で仕事をするという作業員?最初は面食らった。確実に被ばくして死ぬという運命に従う労働者の存在に誰もが驚く。

そこで東芝の原発作業員もたくさん働いていると知らされた。息子の命を奪っても反省も謝罪もしない東芝の原発作業員の待遇・扱いが気になった。案の定、東芝作業員の悲運をインターネットで知って納得するほかなかった。人間の命など金もうけのためなら惜しくないという哲学が生きている東芝だった。千葉県のやくざと同じなのか。東芝の洗濯機やパソコン、冷蔵庫を急いで取り替えた。

<東芝製3号機は核爆発!妻・眞知子も被害者かも?>

いまだに多くの国民は知らない。政府も東電も公表しないし、新聞テレビも報道しない。原子力やくざに羽交い絞めにされているためだ。したがって繰り返し活字に残しておきたい。福島の東電3号機は、東芝製の原子力発電所である。燃料はプルトニウム加工燃料(MOX)。ウランではない。プルトニウムは核兵器の材料で知られる。中性子を大量に飛ばす危険すぎる原発である。

この3号機の核爆発放射能が315の午前10時頃から昼前にかけて大量に首都圏に流れてきている。当時、東京・大井町のマンション13階に住んでいた妻も被ばくしたのではないか、との疑問が出てきた。そうだとすると、次男に次いで2013年11月23日に非業の死を遂げた妻・眞知子も!?と考えると、いたたまれなくなるのである。1年前には同マンション15階のAさんが肺がんで亡くなった。妻は肺腺癌である。被ばくの度合いや体質で異なるが、間違いなく首都圏の被害者は少なくない。東芝が再生に一歩?ありえないだろう。(本日も記事が消えたり、おかしな文章スタイルを強いられた)

2023年9月22日記(反骨ジャーナリスト・政治評論家)