旭日旗覇権と破局<本澤二郎の「日本の風景」(3554)
<帆船日本丸否定の見事な戦前回帰ナショナリズム>
大義は捕鯨船のように「調査」名目の偽りの日本軍艦が、議会抜きの正月明けに閣議決定、まるで泥棒猫のようにそそくさと強行、戦場のような中東海域に出動した重大事態に、新聞テレビと議会は、依然として様子見でしかない。これはどうしたことか。
インド太平洋に向けた、覇権の第一歩だという認識がまるでない。ヒトラーまがいの軍事介入であることに、誰もが気づいていない?
悪政のブレーキ役の霞が関も沈黙している。特定秘密保護法に窒息死させられている官僚機構と言論界なのか。
一部の若者たちが破局の日本に気づいたようで、小規模な反対デモが起きたというが、それを新聞テレビは香港デモのようには報道しなかった。
死に体政権の安倍晋三が先導した旭日旗軍艦は、帆船ではなく人殺しの兵器であるが、善良なジャーナリストを殺害したサウジアラビア皇太子は、一昨日評価して見せた。戦前回帰の日本軍の介入を歓迎する中東諸国というのも、異常である。
<隣国の混乱混迷を出し抜いたワシントン公認の紛争地派兵>
もっと異常な事態は、日本の隣国であろう。
安倍・日本会議に慰安婦・徴用工でとことん痛みつけられている、右翼から反日政権のレッテルを貼られている韓国の文在寅政権だというのに、旭日旗出動に沈黙している。
それどころか、韓国の軍艦も中東海域に出動するようだ。むろん、ワシントンの要請を拒否できないためだ。
米国との貿易戦争に大幅な妥協を強いられた中国、それゆえの日本との融和路線転換も裏目に出ている。香港問題と台湾問題がリンクした日米英の攻勢にも振り回されて、苦戦を強いられていた。
その場面を巧みに突いた軍事的攻勢でもあった。台湾独立派総統の再選を祝った日本政府外務相に遺憾を表明しただけで、肝心の要の日本軍暴走に対して、沈黙しているようだ。
<破局は一本の槍で突然訪れるものか>
日本国民と、国民の代表である国会を出し抜いた日本会議政権の暴政を、新聞テレビさえも窒息死して、覇権・破憲行為を阻止しようとしていない。これこそが深刻な事態である。
頑強な防波堤も、アリの一穴で崩壊するという。旭日軍艦はどう見ても槍である。武器弾薬の殺人兵器である。日本国憲法が、断じて政府に許していない違憲行為である。
これの準備に狂喜した河野太郎防衛相の父親は、自民党総裁を務めた洋平で、彼は宇都宮徳馬の平和軍縮派の後継者のはずだった。父親と真逆の行動をして恥じない倅に、愕然とするばかりである。
重大なことは、アメリカのいかがわしい大統領を利用しての、中東派兵であることにも、深刻さが理解できるだろう。
<深刻すぎる新聞テレビの窒息>
朝日新聞は今この瞬間をどう報道しているだろうか。毎日新聞は、東京新聞はどうなのか。残る読売・日経・産経は改憲新聞だから、感動的に報道しているのかもしれない。日刊ゲンダイが一人奮戦している。
ゆえに国民の3・5割が、旭日旗軍艦の出動を賛成している。共同の世論調査だが、偏狭なナショナリズムがここまではびこってしまったのか、改めて驚きを禁じ得ない。
新聞テレビの窒息と、隣国の変容が、戦前のゾンビを呼び寄せてしまったものか。これこそが「破局・因果は巡る」でいいのか。
警鐘を乱打するほかない。眠ってしまっているアジア諸国の、識者の覚醒を強く求めたい気分である。
2020年1月14日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)
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