本澤二郎の「日本の風景」(5360)
<300万の死と歴史の正当化=神道・靖国神社遊就館の闇>
昨日の石破茂の施政方針演説に石橋湛山が飛び出した。彼こそは平和主義外交の第一人者として、宇都宮徳馬らと計って日中間の正常化を掲げて内閣を組織したが、不幸にして健康がそれを許さなかった。石破から平和外交を打ち出すのかと期待したが、それはなかった。神道・日本会議の極右の壁が許さなかったのだろう。
それよりも、日本のアジア外交の基本は歴史認識にある。80年前の不幸な近現代史を否定し、それを正当化するA級戦犯の岸信介を源流とする神道・日本会議の暗躍によって、いまだに300万人の死者を合祀するという靖国の参拝問題が、侵略戦争の残滓として現在も引きずって人々の感情を逆なでにして国際間の政治問題化させている。
11月24日世界遺産「佐渡島の金山」の労働者追悼式典において日本政府代表が靖国参拝をしていたとする報道に反発した韓国政府が欠席し、日韓関係が揺れた。また靖国神社の石柱にスプレーをかけた中国人の若者は、法廷で「311東電フクシマの汚染水垂れ流しに対する抗議」と証言し、日中間の歴史認識の厳しさを改めて印象付けた。元凶は日本の不可解な近現代史を教えない戦後教育と、依然として靖国の皇国史観に起因する。靖国の遊就館は日本軍国主義を正当化して反省のかけらもない。日本国民からすると、300万の死に対して反省も謝罪もしていない戦争神社であり続けている。侵略を正当化する首相以下閣僚や国会議員が参拝して、アジア諸国民の怒りを買っている。これは憲法の政教分離違反である。
国際社会で認知されていない靖国の闇は、戦後の80年もの間、不気味に存在し続けている。ひとえに日本政府の責任である。これらの非を報道しない無様な言論界にも重い責任があろう。
<歴史認識の落差と近現代史蓋して教えない戦後教育>
靖国参拝派というと、岸の流れをくむ清和会派閥。森喜朗・小泉純一郎・安倍晋三ら自民党極右の面々だが、闇献金事件の表面化で崩壊の危機にある。安倍は銃弾に倒れ、森は五輪疑惑など犯罪まみれ。笹川ギャンブル財団の保護下にあると見られている。
清和会を支えてきた読売グループのドンも寝たきり状態で、動きは止まっている。戦後80年にしてようやく日本政治も正常化に向かう時だが、それでも学校で史実を教えないようにしている。日本国憲法の平和主義のすばらしさを教えない異様な日本である。
政治屋の靖国参拝は、すべてではないが毎年繰り広げられている。結果、日本は国際的な孤児なのだ。回避しようとしてワシントンに媚を売ることになる。海外で胸を張れる日本人は少ない。
<南京を知らない極右政治屋の大虐殺否定>
日本はアジア諸国に対しては、加害者である。反省をしないで開き直る日本人を尊敬しない。経済的利害による薄っぺらな関係である。
近年まで安倍や小泉を含め、自民党議員は日本軍による大虐殺の地・南京を訪問しないものだから知らない。現地に立とうとしない。盧溝橋の抗日戦争記念館は北京市内にあるが、それでも彼らは、台湾に飛び込んでも中国にはいかない政治屋ばかりだ。
「角栄の薫陶を受けた」と吹聴する石破茂が、南京や盧溝橋・ハルビンに行ったと聞いたことがない。名古屋市長から国会議員にえらばれた河村たかしは、急ぎ南京と盧溝橋に行くべきだ。
<南京と盧溝橋への平和行脚に涙した日本人女性>
初めて南京を訪問し、そこで大虐殺記念館を訪問した時の驚きようはなかった。帰国して直ちに恩師の宇都宮徳馬の門をたたいた。「急いで月刊誌・軍縮問題資料に書きなさい」といわれ、活字に残した。現地の旅行ガイドが「日本人は行きたがらない」と説明された時も衝撃だった。
中国の主だった観光地巡りをする機会を利用して「ここでの日本軍の加害を教えてほしい」と要請してばかりしているうちに、中国観光局の友人に嫌われてしまった。
何度も学生や市民を集めて訪中団を編成し、南京や盧溝橋を歩いた。女性の大半は涙を流した。ヒロヒトの軍隊の暴走は筆舌に尽くしがたい。
戦後50年の1970年に敢行した南京・盧溝橋の旅は参加者50人。医師や大学教授、自民党秘書、家庭の主婦、労組幹部、学生らとの「平和の旅」は、生涯忘れられない思い出となった。
<現地を歩いて「これで安心して生徒に教えられる」と高校教師>
感動したことの一つは、千葉県の若い高校の歴史教師からの便りだった。彼は教えられない近現代史を生徒に教えるという責任を負っていた。どう教えるか?全くわからない。
彼は大虐殺記念館と抗日記念館での証拠物件の数々を、自身の目で確かめた。南京では加害者と被害者の交流を、目と鼻の先でも確かめた。人民日報編集長は「私の家族や親類から7人の犠牲者が出た。皆さんの真摯な振る舞いに感動して初めて披露します」という話に涙するものもいた。
歴史認識を共有すると、人間はお互い信頼する関係が生まれる。
<忘れられない李克強の遺言>
「中国でも近現代史を知らない若者がいます。これを克服する教育をしています。同じように日本でも近現代史を学校で教えてもらいたい」とは中国の政治指導者として活躍した李克強が、中国共産主義青年団の書記のころ、単独会見した時の切なる日本への要望だった。「嫌なことは忘れろ」が日本人の悪しき文化だ。
日本は近現代史に蓋をして教えない。知らない日本人の右傾化した人物が、右傾化言論界に巣食って危うい記事を載せている。最近のYouTubeには、石原慎太郎レベルのものが少なくない。その悪しき情報を鵜呑みにする若者が、アジア諸国民との関係を悪化させる。
中国人は学校で、家庭で、社会で近現代史を学ぶ。訪日して神社観光で勉強している若者たちも。中には靖国の歴史館を見学する。腰を抜かすものも少なくない。中国にはたくさんのテレビチャンネルがある。日本軍の暴走を取り上げた映画が、毎日のように放映される。筆者でも日章旗が飛び出す場面は目を伏せたくなる。靖国は彼らにとって今も戦争神社に違いない。
日中関係の火花は、石原と当時の首相・野田佳彦の談合による尖閣の一方的な国有化にある。松下政経塾の野田と安倍・清和会は同じ穴のムジナ。日本国民は複眼的思考の人間にならないと、政治の真相である神社・日本会議の野望を見逃しかねない。
歴史を知らないと現在・未来にわたって盲目。盲目人間は歴史を繰り返す!ヒロシマ・ナガサキからフクシマ。いずれ第二第三のフクシマの日本か!
2024年11月30日記(茅野村の仙人・日本記者クラブ会員)
行革ソッポの国家公務員と閣僚給与
政府は2024年度の国家公務員の給与を引き上げる一方で、石破総理大臣ら閣僚の給与は「当分の間、据え置く」方針を決めました。
やくざの証言で有罪確定した前川さん!
福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件で、懲役7年の判決が確定し、服役した前川彰司さん(59)の再審開始が決定して28日で1カ月。福井県警の捜査手法や関係者の証言の信用性については以前からさまざまな指摘があり、一度は無罪判断も示されていた。名古屋高裁金沢支部の決定は当然である一方、遅すぎたと感じる。【山本直】