日本の恥部また一つ<本澤二郎の「日本の風景」(3549)
<ゴーン会見で前近代司法制度が欧米で暴露>
まるでハリウッド映画のような、元日産CEOのレバノンへの逃亡劇に、世界は驚いていたが、今度は本人が堂々の記者会見(1月8日)で、日本の前近代そのものの司法制度を、具体的に指摘、多くの人々の共感を得た。
事件当初は、生活保護世帯レベルの年金生活者の目には、ゴーンの途方もない報酬額に驚愕、さもありなんと高見の見学に徹してきたが、130日という監獄での弁護士なしの取り調べと、妻とも接見させない悪辣な保釈条件、昨日の会見では「自白しないと家族をおいかける」という、文字通りの法務検察のやくざまがいの国策捜査に、世界の識者の多くが共感を覚えたようだ。
特に善良な日本人は、安倍晋三の相次ぐ犯罪について、見向きもしない法務検察、逆に、事件の隠ぺいや不起訴にした役人が、出世するという現実を突きつけられた2019年だった。
かくして戦後の一時期、世界経済大国ともてはやされていた日本の恥部の新たな露呈に対して、先月29日からの法務検察の狼狽ぶりが、いかにも漫画的で、テレビドラマを見ているよりも楽しい気分にさせられるというのも、極右の安倍・自公・日本会議政権ゆえでもあろう。
<レイプ文化にプラス、日本先進国論は偽りだった>
実際に生きてきて過去を振り返ると、孔子の言い分が大分ずれていることに気づく昨今である。日本の恥部となって久しいレイプ・強姦文化を知ったのは、つい最近のことである。
それでいて当事者である女性が立ち上がろうとしない日本である。正しくは一人立った。TBS山口強姦魔に伊藤詩織さんが、槍で突いている。ドン・キホーテではない。強姦魔の人生を事実上、奪ってしまった。彼女こそが、21世紀の日本の女性指導者となろう。
今回カルロス・ゴーン逃亡事件によって、日本の司法制度が欧米の基準から遠くにあることを証明してくれた。
日本の法務検察と警察は、友人によると「税金泥棒」と断じている。同じような指摘を人権派の弁護士からも聞いた。悪党にも人権があるのだから、せめて弁護士の立ち合いは必要であろう。
長時間の取り調べで、被疑者を眠らせない拷問捜査は、容認できるものではない。「家族を追いかける」という脅しは、まさにやくざ暴力団の手口である。
要するに、日本は欧米先進国と肩を並べられる、先進国という政府の好きな言い分は嘘だったのだ。すぐさま司法制度改革に取り組む契機にしたらいい。
日本は後進国なのだ。それは物つくりの分野でも。欧米の物まねでしかなかったのだから。
<法務検察に関与した日本人の常識>
ゴーン会見の内容を日本の弁護士は直接体験していて、よく知っている。警察と検察の不当な取り調べを目撃しているからだ。
筆者が気づいたのは、311の2011年ごろだった。東芝医療事故死が我が息子に襲い掛かったものの、東芝は反省も謝罪もしない。
週刊新潮に東芝病院の不当な措置を大きく取り上げても、東芝は三井財閥をかさに着て一顧だにしなかった。やむなく警視庁に刑事告訴した。財閥病院に対する初めての告訴であるにもかかわらず、共同通信も時事通信も報道しなかった。TBSテレビのほか、朝日新聞と東京新聞が小さく記事にしただけだった。
電通を動かした三井・東芝だった。命を軽視する法務検察と財閥なのだ。
警視庁による書類送検も、東京地検の松本朗という悪党検事が不起訴にした。弱者の願いを踏み潰す法務検察だった。
<医療事故死の東芝病院告訴も検察不起訴>
日本では強姦事件もそうだが、医療事故死事件もほとんどが泣き寝入りである。被害者はゴマンといるのだが、刑事告訴する事例は少ない。告訴しても警察が受理しない。
筆者の場合は受理したが、理由はジャーナリストへの一応の敬意だったのかもしれない。しかし、その先は財閥病院のペースで進行した。
患者急死の場合、病院は警察に通報、遺体の解剖をするのだが、これをしない病院が多い。検事の松本朗は「解剖していないので死因が特定できない」という屁理屈で不起訴にした。
ここから見える日本の司法は、検察がすべて生殺与奪の権利を独占している。ここもおかしい。起訴する、しないの権限が検事の手に握られている。
体験して初めて知ったことだが、日本の法曹界の後進性をも裏付けている。
<検察審査会は形だけで検察の言いなり>
この検察独裁に対して、一つだけ救済機関を設けている。不服があれば「検察審査会」に申し立てができるというのだが、これも悪辣な組織でしかない。
全くの素人を11人選任して、そこに担当検事が適当な資料と説明をするだけである。11人は検事の言い分を聞いて「はいそうですか」で幕が下りる。検察独占そのもので、形だけの制度となっている。
<伊藤詩織さんは体験したばかり>
TBS山口強姦魔事件を告訴した伊藤詩織さんも、同じような体験をした。
強姦魔逮捕直前に、警視庁刑事部長の中村格が止めてしまった。改めて捜査一課に再捜査、書類送検して検事が不起訴にした。
強姦魔救済のお上の手口である。警察も検察も官邸の意向に逆らうことはできない。前近代の起訴制度である。中立・公正は、権力の不正によって崩壊しているのである。
小沢一郎も同じような体験をしている。小沢内閣ができれば、真っ先に司法制度改革に取り組むだろう。
犯罪捜査制度がこのレベルだから、捜査の公正を担保する現状にはない日本である。
<亀井静香の死刑廃止論>
自民党リベラル派の志賀節は、三木武夫側近として活躍した人物で、死刑廃止議員連盟を立ち上げた。
彼は議員連盟に、警察官僚OBの亀井静香も参加していることを教えてくれた。メンバーになった理由がすばらしい。
「警察は男を女、女を男にする以外は何でもできる。無罪の人間を死刑にもできる。冤罪は日常茶飯事。冤罪を禁じるために死刑は廃止すべきだ」
警察の内情から見た死刑廃止論である。正論であろう。いまの司法制度の下では、警察検察は何でもできるのだ。東芝を救った検事の松本朗は、ほかにもいる。強姦魔を救った警察と検察も露見したではないか。
<「木更津レイプ殺人事件」に注目>
筆者は、ここ数年、戦争遺児が浜名というやくざに強姦、性奴隷の挙句に殺害された「木更津レイプ殺人事件」を徹底追及、正義のペンを振るってきた。
千葉県警と木更津署がどう処理するのか、しないのか。そのカギを握っている警察でもある。ゴーン事件はプラス面も少なくない。
2020年1月9日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)