515事件と天皇責任<本澤二郎の「日本の風景」(3486)

<犬養毅首相=満州国承認に抵抗=軍閥+昭和天皇=暗殺>

 数日前の毎日新聞の記事を読んだという友人が「515事件の責任は軍部だけでなく天皇の責任だ、知らなかった」と連絡してきた。ようやく立ち上がった政党政治を消滅させた515事件の黒幕は昭和天皇である、というのだ。近現代史に蓋をかけてきた日本政府の闇を暴くような本の紹介であるとも。筆者も含めて5・15で暗殺された犬養首相のことを、さらっと歴史で学んでいるが、暗殺原因を追及しようという姿勢はなかった。


 当時の関東軍が暴走に次ぐ暴走で、ついに中国・東北地方に「満州国」なる関東軍の傀儡政権が。これに時の犬養は反対した。天皇にも伝えた。これに天皇と軍閥が連携した犬養暗殺の可能性が強い。武器による犬養排除である。


<「狼と義」という本を開くと見えてくる>

 今の岡山県出身の犬養は、慶應義塾や二松学舎で学んだ後、西南戦争を記者として取材している。「日本及日本人」という雑誌では、財閥と軍閥を批判するリベラルなジャーナリストだった。1890年から42年間、実に18回、連続して衆議院当選の実績を残している。その記録は、尾崎行雄に次ぐ。


 神戸中華同文学校、横浜山手中華学校の名誉校長を引き受けている。大の中国派は、孫文の革命派の支援にも力を入れた。おそらく「狼と義」という本も、こうした彼の政治思想を取り上げているはずだ。


 政党政治が衰退する場面で、立憲政友会の総裁にかつがられて政権を担当するのだが、彼の政治基盤は弱かった。財閥と軍閥の侵略派が主導権を握る中で、苦しい妥協政治を強いられる。


 だが、武力で大陸・中国を制圧する関東軍と、そこから大陸の資材を収奪する財閥の暴走を容認することはできなかった。この間の天皇とのやり取りは、まさに現人神ゆえか、すべての記述から読み取ることはできない。


 ただし、5・15反乱兵士の処罰が軽微であるところから、天皇関与を推認することができる。「狼と義」がどこまで踏み込んでいるか?

 彼は対話・話し合いによる解決のため、密使を派遣するのだが、辛亥革命後の中国は、軍閥が跋扈する大混乱期である。蒋介石の国民党も北伐に成功していなかった。他方で、関東軍は東北軍閥の張作霖と提携しながらも、日本財閥が牛耳る大豆利権に手を出したことを知ると、鉄道を爆破して暗殺してしまう。

 「満州国傀儡政権」を発足させたものの、犬養政権はこれを容認しない。事件はそうして起きたのだが、反乱軍は陸軍ではなく、海軍である。ここに反乱軍の陰謀の巧妙さを見て取れる。


<閨閥で動く日本=緒方貞子さん(92歳)の曽祖父>

 今なぜ515事件と天皇責任かといえば、最近亡くなった国連高等弁務官を歴任した緒方貞子さんの曽祖父が犬養首相だったことと関係する。


 思うに、安倍や麻生に限らず、日本の政治経済などが明治の閨閥で動いてきていることに、改めて感じさせられる。庶民大衆が頂点に立つことは容易ではない。たとえ立っても、すぐに排除される。当時の犬養もそんな立場だった。いうことを聞かないと、武器弾薬でもって退治してしまうのだ。


 犬養家は、戦後の時代で芽を出したのだが、健は造船疑獄時の法務大臣として、詰め腹を切らされてしまった。外交官の娘である貞子さんは、吉田茂後継者の緒方竹虎の息子と結婚、閨閥の一角に組み込まれて、国際社会で活躍した。

 彼女は「満州事変」という本を書いている。犬養の信念も、ここで描いているかもしれない。5・15の後、2・26事件が起きている。こちらには厳罰、すなわち天皇も容認できなかった、という事件だったことがわかる。


 「昭和天皇は侵略戦争に関与していなかった」という天皇教の皇国史観をただす必要があろう。その機会を、今回は緒方貞子さんがくれた。近現代史を学ばない日本人は、国際社会では通用しない、ということを学ばせてくれる。


 犬養の言い分に「極端な右、左はダメ」がある。現在の安倍・自公政治は、極端な右だから、隣国との関係を壊してしまい、本日、タイでの日韓首脳会談11分とさえなかった。

2019114日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

権威失墜の認証制度<本澤二郎の「日本の風景」(3485)

1週間二人の閣僚辞任で権威喪失の天皇の認証>

 日本の閣僚などは、その地位に就くと、わざわざ皇居に出向いて、天皇から認証をしてもらうことになっている。日本国民統合の象徴からのお墨付きである。興味も関心もなかったため、様子がわからないのだが、おそらく天皇のハンコ(御璽)をついた書状をもらうのであろう。

 天皇認証を受けて本人は、新たに発心して、仕事に専念する。仕事とは国民の公僕として、さらに励むというのである。そこには一点の曇りもない良心を前提としている。

 したがって大臣となるには、任命者が事前に、徹底して身体検査を行う。これは健康のみならず、これまでの行いに非はないのかどうか、文字通り修身斉家の人であるのかどうか、国民や家庭に迷惑をかけていないかどうかの検査・審査を受ける。


 問題のある人物は、自らの判断で閣僚推薦を断るのであるが、まずはこうした事例はない。それどころか、あれこれと口実をつけて、自分を売り込むのであるから、逆である。


 これは首相になったものについても、である。憲法尊重擁護義務を果たすのか、果たせるのか。まともな首相であれば、自問自答の日々が続くことになる。そうして政治は、治国平天下を約束されるのであるが。


<崩壊した天皇認証と重大な政治責任>

 昨日、突然に日本記者クラブ会員のS君が来訪、日本記者クラブ50年の記念品という一合升と麻で作ったと思われる手提げ袋を持参してくれた。

 駆け出しの記者のころは、この日本記者クラブ(Japan National Press Club)は高嶺の花だった。門外漢には理解できないだろうが、新聞記者にとって、ここの会員になることが、いわば記者としての登竜門だった。


 首都圏紙・東京タイムズの政治部長になったのが、鈴木善幸内閣の時で、この時点で初めて基本会員の名誉に浴した。その時は、大いに一人満足した。ただそれだけのことでしかなかったが、その時の記者クラブ証を現在も使用している。ただし、現在は個人会員であるが。


 一度、北京の国際空港で若い男女が奪い取るように荷物を移動してくれた後、突然開き直って金を要求してきた。彼らの詐欺行為を諦めさせたのは、この記者クラブ証だった。

 日本記者クラブは昨今、権力監視を放棄してしまい、完ぺきに色あせてしまっている。権威などないわけだから、いただいた一合升は「記者クラブも50年の道を歩んだのか」と関係者が感慨にふける程度のものである。


 だが、天皇から認証を受けた菅原と河井という人物は、いうなれば天皇の顔に泥を塗ったことになる。明治が確立した天皇制だから、そのころなら切腹ということになろうか。


 腐敗・違法の人物を、自らの傲慢な野望達成のために任命した首相の任命・政治責任は、極めて重い。認証者である天皇を裏切ったわけだから、一片の口先での謝罪で済むわけではない。象徴である天皇と主権者に対する裏切りである。


<安倍晋三責任は「行政を前に進めることだ」と国民と天皇愚弄・開き直る>

 安倍の天皇利用は、日本一だと誰もが思っている。

 166億円の天皇交代劇で血税を使いつくすために、平成天皇の退位という前例のない手段を用いた、と今では、凡人でも理解している。「安倍・日本会議の作った令和など使用しない」という国民も多い。

 一連の時代絵巻のような166億円の宗教儀式を、歴史の伝統のある韓国・朝鮮や中国の人々も、口には出さないが「そういうことか」と納得している。日本文化の源流は、大陸と半島なのだ。「十二単は中国古来の服装」はその一つである。


 それにしても、安倍という人間の政治責任が、いかにもふるっている。「行政を前に進めること」が任命責任の取り方と独裁論をひけらかして、国民と天皇を愚弄して開き直っている。「日本語ではない」と清和会OBは反発している。


<菅攻撃が清和会内部で浮上!>

 統一教会の集まりに参加した自民党改憲派の代表格・細田は、元来、性格は穏健である。今回の事件に対しては、派内をまとめきれない。

 もともと安倍人事でうま味を吸った人物は、稲田と萩生田など数人。7年にわたる安倍人事に対して、派内は怒りが充満している。もともとが右翼的な派閥で、天皇制に共鳴している。天皇認証人事にケチをつけた菅人事だから、余計に菅攻撃に集中している。安倍にいいように利用された宏池会も、反撃の機会を狙っている。いまや四分五裂のよたよた自民党なのだ。

2019113日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

安倍の悪政<本澤二郎の「日本の風景」(3484)

<萩生田の「身の丈」発言のからくり判明>

 文科相の「身の丈」発言についての解説を、神戸外大OBがしてくれた。不勉強者は、さっぱり何のことか理解できなかった。いま判明した。そもそも英検という名前は知っていたが、どこがどのような試験をしているのか?これさえ不明だったのだが、そのからくりがわかると、安倍が萩生田を文科省に送り込んだ理由と、それが安倍悪政の最たるものであることも。

 受験生は知っている。受験生家族も分かっている。極右・日本会議から善政を見つけることは容易でないことは知っていたが、これは英検業者と文科官僚が編み出した利権の悪政である。これを実施させてはならない。断固反対すべきだ。


<英検7業者と文科官僚の莫大な利権制度、加計の比ではない!>

 英検というと、英語の検定試験を意味するのであろうが、確たる裏付けのある試験制度ではない。

 民間業者が、金もうけのために、勝手にビジネス化してきたものだ。その成果を私立大学の一部で拝借、受験生に一定の評価を与えてきた。


 語学力というと、英語というらしいが、中国語やスペイン語、フランス語、ドイツ語、ロシア語にもいえる。英語に限ったことではない。英検の業者は7社も存在しているという。


 外語大OBによると、岡山のフクタケ書店も大手の業者だという。「かつては岡山の興行主だった。半やくざが、今では英検で暴利を得ている」というのだから、大分怪しい教育企業といえる。


 「これら民間業者が、文科省有識者会議を牛耳って、国立大学受験生に押し付けようと、今回の制度導入計画となったもので、各方面から反発が広がっている」「私立大学どころか、国立大学受験にも制度化するという、かなりいかがわしいものだ」などと説明を受けると、筆者でなくとも、誰もが反対することになる。


<国立大学に導入して受験生・受験生家族いじめの悪政>

 こうした中での「身の丈」発言が飛び出した。そして、これが新たな安倍・萩生田の教育利権となる。安倍が側近を文科省に送り込んだ理由も判明する。


 NHKや新聞テレビは、以上のような解説をしない。追及する野党議員は、この莫大な利権構造狙いを理解しているのであろうか。新聞テレビもごまかして真実の報道をしていない。

 新聞テレビでも、真相がつかめない現在の日本社会が、国民の不安要因といえる。

 説明によると、英検は何度でも受験できるが、この受験料が5万円とべら棒に高い。繰り返し受験して、得点を上げようとするため、もうそれだけで数十万円をかけねばならない。


 文科省有識者会議のこうした決定には、もちろん、裏がある。会議メンバーは、英検業者7社の代表が参加しているというのである。

 「受験生は参考書を購入する。そこでも業者は利益を上げることができる」という。


 得点を上げようとして受験生は、繰り返し大金を払って受験する。そのうえ、そのための業者は、参考書販売で二重の儲け、というのだ。文科省官僚と民間業者の守銭奴ぶりも極まっていよう。


 役人も業者も受験生とその家族から、とことん絞り上げようという魂胆なのだ。延期で誤魔化されてはならない。悪知恵は役人と業者によってひねり出したのであろうが、これが実現すると、かの加計事件どころではなくなる。

 

<英検制度は悪政の最たるもの、廃止せよ!>

 安倍の悪辣さの最たるものであろうが、これでは貧乏人は高等教育を受ける機会を失ってしまう。有能な人材を排除する教育制度であろう。


 廃止が当然である。これを強行しようとした萩生田という日本会議の極右政治屋に徹底してメスを入れるべきだろう。


 教育は現在の国立大学のやり方でいいのだろうか。東大法学部任せで国のかじ取りは可能だろうか。NOである。菅原や河井や萩生田を評価できるであろうか。


 修身斉家の人であることが不可欠だ。正義を貫ける人間、道理をわきまえた人間教育に重点を切り替えるべきだ。人間らしいいい人間つくりに目を向けよ、である。悪党を許さない法治の人が、今の日本に必要で、英検導入ではない。

2019112日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

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