人間の情愛<本澤二郎の「日本の風景」(3432)
<台風15号の風速50メートルを生き抜いたジャーナリスト>
自然は生命をはぐくむ根源である。しかし、突然に狂ったように雄たけびを上げて、命に襲い掛かってくる。経験者は忘れようとしても忘れない。米粒のような存在を受け入れて、自然との共存を図ろうとする。
同じく戦争体験者は、平和に喜びを感じ、武器弾薬に傾斜することはない。いま戦争を知らない世代が、政治と経済を操って、危険水域に近づいている。その最悪の政権が、安倍・自公内閣である。
人間の情愛が薄いのも特徴である。争いに傾斜して、抑制できない。歴史の教訓を学んでいないため、監視役である国民が油断すると、同じ愚を繰り返すことになる。
歴史は、為政者の資質として「修身斉家」の人であることを要求している。そうしてこそ「治国平天下」の人になれるとする。道理にかなっている。
自然と生命は、為政者と人民の関係に似ている。
<真夜中の弁当差し入れに感謝感激>
生きた心地がしなかった9・9の未明の3時間は、言葉にならないほど長く辛かった。経験者は理解できるが、未経験者はわからない。
安倍・自公内閣の面々は、まさしく戦争の恐怖を理解していないため、トランプの要請を受けて武器弾薬を爆買いして恥じない。人民の思いを全く理解していない。
彼らには、人間らしい情愛・人情がないか、著しく不足している。
台風15号が去ったあとの3日間も大変だった。情報化社会から予告なしに情報遮断、原始社会のような状態に追い込まれた。
幸い、亡き妻が遺してくれた1本のローソクで過ごした。格好良く言うと、月と共に床に就き、太陽と共に目を覚ますのである。最もストレスの少ない健康的な生活スタイルである。間もなく中秋節である。
その日の真夜中に突然来訪の知らせが入った。蒸し風呂のような夜なので、上半身裸の状態だったので、慌てて着替えて玄関に入ってもらった。
9月5日に来てくれた青木愛参院議員の日景秘書である。両手にコンビニで購入したような弁当や飲み物を抱えていた。弁当の差し入れである。
せっかくの好意を突っ返すわけにもいかない。ありがたく頂戴した。そして心から感謝の意を表した。
人間は、追い込まれているときの助っ人に感謝するものである。人情・情愛に感謝するのである。これは理屈ではない。
秘書は、台風15号の被害の一番大きかった館山市方面で、支援の活動をして、夜中に我が家にも来てくれたのだった。一瞬の幸せを感じたものだ。人間は、生きていれば、必ずいいことがあるものである。
<八千代市から駆け付けた友人>
昨夜遅くに固定電話と携帯が使用できるようになった。そこに清和会OBが電話してきた。4日ぶりだが、ずいぶん長い感じがした。
小屋が飛んでしまったり、柚子が全滅、菜園も全滅といいところなどないが、お互い無地だったことを喜び合った。
自然の猛威が、人間の情愛を育んでくれるのである。するとどうだろう、今度は玄関先に八千代市の青柳さんが姿を見せた。これまたびっくりだ。
真夜中にパソコンで「無事」を知らせておいたので、わざわざ来訪不要と厳しくお願いしておいたのだが、彼は高速道路を使ってきてくれた。
被害を受けて、他人の情愛に感動する?悪いことではない。人間にとって一番の贅沢なのかもしれない。
<85歳の恩師に電話して感謝される>
官邸では、小泉進次郎が安倍に懐柔されたと大騒ぎだが、小泉家の寝返りに、人の情愛はない。
今度は、反対に木更津市内の友人らに電話した。瓦屋根が飛んだので、ブルーシートを覆う準備中の小倉君、山間部の池田邸は、住宅の被害はないに等しかった。
ブルーベリー農園の江澤君は、樹木などが倒れてしまったと被害は大きいらしい。しかし、みなへこたれてはいない。
富津市望井に住む恩師の石渡幾代子先生は「屋根瓦を飛ばされてしまい、近所の人がブルーシートをかぶせてくれたところ。これから娘の家に行くところよ。でも、電話をもらい、本当にうれしい」と喜んでもらった。
電話をして感謝される?これも災害のお陰なのか。
<地球温暖化との因果関係に目をつむる人類>
やはり風速50メートルの台風のことに目を向ける必要があろう。本当に福島原発の放射能汚染水保管タンクは大丈夫だったのか。疑問なしとしない。
人類は、工業化と共に地球破壊の温暖化を、結果的に推進してきた。そこでつかんだことが、人間の幸せにつながった、というのは間違いであろう。
北極の氷塊が溶けて久しい。それを放置してきた無責任な人類である。
風速30メートルしか経験のない人間の理解は薄いかもしれないが、50メートル経験者の思いは強固である。進次郎なんぞにはわからない。むろん、安倍にもわからない。
3時間にもわたっての風速50メートルの深刻な試練は、人類に重大な警鐘を鳴らしていることなのである。情愛レベルにとどまってはいられないだろう。
2019年9月12日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)