本澤二郎の「日本の風景」(4968)

<李国強前総理死去に哀悼の意=改革開放の理性の人>

中国外務省の毛寧報道官は27日の定例記者会見で、「突然の心臓発作による李克強前首相の悲劇的な死に深く哀悼の意を表する」と述べ、李氏の葬儀の段取りについては「しかるべき時に」発表されると説明した。


中国が経済危機の渦中において、人民が最も信頼する経済に明るい李克強を失ったことは、アジアと世界において惜しい人物を失ったことになる。日中友好をライフワークとしてきた日本の言論人の一人として、心の底から強く哀悼の意を表したい。国際政治においても、中国の安定がアジアと世界の安定にとって不可欠である。繰り返して惜しい人材を失ったと声を挙げたい。おそらく心労・ストレスに違いない。

経済にも明るく「腐敗しない廉潔の人」に対して、人民の評判は高かった。彼は中南海を去るとき「天は知っている」と自らの心情を吐露したという。経済政策を任せる政治環境さえあれば、現在の深刻な経済危機は想定できなかった。惜しい友人を失ったアジアと中国・日本である。  


<思い出は共青団第一書記の時に単独会見>

1998年に43歳で河南省の省長に抜擢された数年前の中国共産党共青団第一書記時代に、筆者は北京の共青団本部で単独会見をした。さも改革開放の鄧小平の申し子のように「中国は二度と扉を閉じることはない」と繰り返し自信満々に日本人ジャーナリストに語った。

共青団は中国共産党幹部への登竜門である。先輩の胡錦涛に続いて大中国を率いてゆく運命の星が約束されていた。95年には、中山太郎秘書の有澤志郎君と共著で「中国のニューリーダー」(駿云堂)を書いたが、この時は胡錦涛の出番を予見したものだ。

余談だが、胡錦涛について言及すると、彼が副主席の時に「中国の大警告」(データーハウス)を出版、間もなく中国語に翻訳された。そのころ小渕恵三と中山太郎ら自民党訪中団と人民大会堂で会見すると、彼は「中国人民の思いはすべてこの本に書かれている」と本を紹介しながら小渕らに説明した。その少し前に小渕が「会いたい」と言ってきた。二人で食事する場面で「首相を目指すというのであれば、中国を知る必要がある」と強く進言した。彼は素直に北京へと駒を進めた。彼が急逝しなければ、日本政治が今のような清和会主導の極右政治に堕落する事態に陥ることはなかった。


改革開放と歴史認識を繰り返し強調>

「改革開放はこれからもずっと続けて行く」と改革派の旗手として国際社会と交流する中国を力説したものである。日本にも300年間、鎖国政策を推進した時代が続いたが、これが北方領土問題などで日本が追い込まれる火種を残した。

窓を開く国際協調外交は、人々の生活を安定させる。「中国も貫徹してゆく」と共青団第一書記は、日本人ジャーナリストに繰り返す一方で、もう一つが「歴史認識」のことだった。


不都合な侵略史を隠蔽する日本政府と日本の学校教育に対して、厳しく指摘して「歴史を直視する教育」を訴えた。全くその通りである。歴代の文部大臣、現在の文科大臣は右翼議員の独占が続く。歴史教科書に対する文科省の教科書検定は、これまでもずっと圧力を行使してきて、自由な真実を書く歴史教科書を羽交い絞めしてきている。

元凶はいうまでもなく極右・清和会議員の文教族。その先頭を走ってきたのが、日本は「神の国」という途方もない言動を吐いている森喜朗ら神道議員連盟の面々、日本会議の極右メンバーである。

日中関係を破壊した清和会主導の靖国参拝の文教政策が、日中関係を破壊した。森・小泉純一郎・安倍晋三の下で粉々にされてしまった。あろうことか安倍配下の高市早苗や萩生田光一らが、安倍に代わって、台湾有事を煽り立てている。


意外や小泉進次郎が昨日の衆院予算委員会で「インド重視」をがなり立てた。進次郎も歴史認識を理解していないことに驚いた。彼は米国のジャパンハンドラーの申し子でもある。要注意人物である。

日本の外交政策は、右顧左眄することなくどこの国・国民とも仲良くすることが基本である。このこともまた学校教育の現場で教え込まねばならない。


<心労が68歳の寿命か>

人間が健康に生きるための最大の要件は、ストレスをためない生活が不可欠である。ストレスを吐き出す手段は、ひとり閉じこもることなく、声を出す人間でなければ、病に負けるしかない。

大平正芳・田中角栄・小渕恵三らは、ストレス解消に失敗した。角栄はほどほどのアルコールで満足せず、浴びるように飲むことを止められなかった。

身近な例は「木更津レイプ殺人事件」の被害者。レイプした戦争遺児を、やくざが恐ろしいドーカツを、繰り返したことから、その衝撃で突発性の大動脈瘤破裂で非業の死を遂げた。彼女は性被害を警察に訴えて解決を図ろうとしなかった。犯人は市民に姿を変えて創価学会に入会し、介護施設を経営しながら本業の強姦事件で女性を食い物にしていた。今も公明党のおかげでのうのうと生きている!


ストレス・心労は誰にでもある。人間社会そのものがストレス社会だ。そこから離脱する才能を有することが、長寿の秘訣でもある。まじめ人間はその点で優等生になれない。声を挙げ、叫ぶ人間になることが最も大事であろう。それにしても68歳の李克強は若すぎる。本当に惜しい人材だった。

2023年10月28日記(反骨ジャーナリスト・日本記者クラブ会員)