杉田水脈は政治家失格<本澤二郎の「日本の風景」(4641)

<「岸田首相は直ちに政務官の首を撥ねよ」が世論>

 総務省の杉田水脈政務官(自民党衆院議員)は30日の参院予算委員会で、2014年の内閣委員会において「日本に女性差別というものは存在しない」と発言したことについて、「命に関わるひどい女性差別は存在しないという趣旨だ」と説明した。立憲民主党の塩村文夏氏の質問に答えた。他の野党議員からは「命にかかわるDV(家庭内暴力)だってある」と、杉田氏の認識の甘さを批判する声が上がった。(以上は毎日新聞)


 「岸田人事でまともな人事は、外相の林芳正 だけ」との思いは強くなる一方である。万一、岸田が政権を投げ出すようなことがあれば、右翼は喜ばないだろうが、反安倍の急先鋒の林が最適任者」というのが真っ当なジャーナリストの声である。政治家はバランス感覚が不可欠だ。右翼片肺政権が一番よくない。ついでながら安倍内閣に触れると、内外政とも、評価するレガシーは何もなかった。


 中でも外交がひどかった。プーチンとのロシア外交はとうとう一歩も前進しなかった。むしろ大きく後退してしまった。北朝鮮外交も同様だったし、韓国や中国との関係も悪化させた。危険すぎる安倍の台湾有事戦略は、米中戦争の引き金になるところだった。

 ワシントンのオバマは、靖国参拝と韓国との歴史認識の安倍対応に衝撃を受けた。「安倍の秘かな核兵器開発計画に驚いて、日本に貸し出していたプルトニウムを返還させる措置をとった」ほどである。トランプ政権は安倍と同じ統一教会仲間のため、仲良しゴルフを演出したが、莫大な武器弾薬購入に特段の配慮をした。60兆円のバラマキ外交はひどすぎて評論する気にならない。


<ひどすぎる人物の起用ばかりの岸田文雄人事の不思議>

 安倍に比べると、岸田ははるかにまともと見られていたが、今やっている統一教会退治は、死者に配慮しているかのようで、かなり危うい。戦争準備の大軍拡にいたっては、安倍路線の踏襲そのもので、腸が煮えかえる思いである。

 さらに人事はお粗末そのもので、総務省政務官だという杉田水脈は、教養がないというよりも、悪どい性格の持ち主だ。女性としての品格も常識もない。どのような家庭で育ったのか。冒頭の毎日新聞記事によると、こんな自分でも政治家になれるのだから「日本に女性差別などない」と決めつけているかのようで痛々しい。


 彼女を政界に引き上げた背景を全く知らないが、なんとなく胡散臭い印象を受けてしまう。まさか安倍チルドレンか、それとも小泉チルドレンなのか。ひどい人物を国民の代表に送り込んだものだ。自民党の責任は重大である。

 国会図書館が近いのだから、ノンフィクション作家の第一人者・山田盟子本を読んでもらいたい。国会では女性秘書の多くが「お茶くみ」と男たちから見られている。彼女の事務所の様子を知りたいものだ。


 TBS強姦魔の被害者・伊藤詩織さんの屈辱を全国民はおろか世界中が同情している。強姦を正当化することは出来ない。薬物使用の可能性が高いのだから、山口はヤクザ並みで人間失格である。人間として伊藤さんに同情するのは、ごく当たり前の対応である。TBS強姦魔に肩入れするような人間は、常識的に見てまともではない。筆者などは、女性は優しく平和的な人間ばかりだとずっと思ってきたが、女にもすごい女がいるということを、杉田に教えられてしまった。

 知り合いの女性弁護士は「杉田ほど女性を貶めた女性はいない。女性は怒っている。岸田がまともなら杉田に責任を取らせるべきだ」と厳しい口調で繰り返し批判している。

 それにしても、安倍の周囲にまとわりついた女性議員のすべてが、不思議と極右・神社本庁の日本会議派と見られている。普通の人間ではない。


小選挙区制比例代表に深刻すぎる制度的欠陥がある

 党と内閣の人事を眺めると正直なところ、自民党に人材がいないことが分かる。首相を筆頭に自民党幹部もそうだし、大臣を首になった山際を、清和会・統一教会の第一人者・萩生田光一が、党のコロナ対策本部長に起用した。まだ萩生田が自民党の三役に居座っていることだけでも驚く。


 安倍8年の在任期間に真っ当な政治家は、安倍を「国賊」と喝破した村上誠一郎しかいない。村上に同調する人物が自民党内にいない。小粒ばかりで、志のある信念の政治家は一人もいない。自民党は解体すべきだ。

 その元凶は小選挙区制である。野党の無力さも手伝って、金目当ての政治屋ばかりだ。役人の原稿を見ないと答弁できない大臣など、極右にひれ伏す輩ばかりだ。憲法違反の戦争準備に異論を口にする閣僚もいない。全体主義・独裁の政党である。小選挙区制が自民党どころか、全政党を衰退させている。杉田水脈はその代表例ではないのか。

2022年12月1日記(政治評論家・日本記者クラブ会員)