岸田VS安倍の死闘<本澤二郎の「日本の風景」(4494)

<安倍・超軍拡派の島田更迭、参院選後の内閣改造で岸更迭も>

 永田町から小さな変化が飛び込んできた。現首相と元首相の死闘のゴングが鳴り響いてきたようだ。内外政のすべてを、ストロング・ナショナリストの安倍晋三におんぶにだっこされてきた岸田文雄内閣が、遂に本気の抵抗を見せ始めたのだ。護憲リベラルの伝統を有する宏池会が、国粋主義の清和会に対して、挑戦状をたたきつけた格好である。窮鼠猫を噛む!


 防衛省の前事務次官の島田和久を知らなかったが、彼こそが安倍の大軍拡論どころか超軍拡論の担い手である国粋主義官僚の代表として、安倍路線の推進役だった。「軍事費2倍を国債(借金)で」という途方もなく恐ろしい安倍発言の指南役でもあった。障害者となって動きが取れない、安倍の実弟・岸信夫のブレーンだった。安倍と岸の強い意向だった島田留任を、しびれを切らした岸田が蹴飛ばして、島田を辞任させた。珍しく永田町にさわやかな風が吹いている。平和軍縮は天の声であるが、どうだろうか。

 官邸の主は、首相となった岸田である。岸田が遂に伝家の宝刀を抜いて、安倍と岸の兄弟を袈裟掛けにした格好だ。まずは試し切りか?政府与党内での安倍斬りは初めてだろう。内外に波紋を広げている。

 要は、安倍と岸田の死闘の幕が、遂に切って落とされた形。太陽は一つ。二匹の虎は同じ住まいにはいない。必ず一匹は打倒される。永田町もしかりだ。

 参院選後の内閣改造で、岸更迭もほぼ間違いないだろう。健康問題を抱える岸留任を、安倍が必死になっても土台無理とみたい。健康な人間でないと政策判断が狂うのだから。後任人事が注目される。代わりが岸田派の右翼だと、平和を望む国民は納得しないだろう。


<第二ラウンドは物価値上げの犯人・黒田東彦追放作戦>

 国民の財布に手を突っ込んでくる安倍流アベノミクスの代表が、いまや日本銀行の黒田東彦。1%のための暴利を目的に、露骨な円激安政策を踏襲し、ただでさえ不況下の物価高に泣いている庶民大衆の財布の底にまで、とことん指を突っ込んでくる黒田・日銀の金融政策に対して、国民の怒りは頂点に達している。「黒田をたたっきれ」は天の声だろう。

 黒田斬りに抵抗しているのが、むろんのこと安倍と財閥1%である。「円安2か月でトヨタなどは6000億円を寝ていて稼いだ」ことに国民は腹を立てている。筆者などは、安倍桜前夜祭にアルコールを無料で提供したサントリーと共に、不買対象企業として警鐘を鳴らしている。

 金融政策の専門家は、以前から「黒田を更迭しろ」と叫んできたが、ここにきて怒りは頂点に達している。「物価の番人」どころか、物価引き上げの元凶を貫徹しているわけだから、当然であろう。

 黒田斬りが参院選後のいつの時点で断行されるか。黒田は俎板の鯉そのものである。「公金3500万円をもらいながら庶民に物価高を押し付けている史上最悪の日銀総裁」と指摘されても、本人は釈明さえも出来ない。岸田は1日も早く物価の番人を誕生させる責任がある。そのための黒田更迭なのだ。


<下がらない内閣支持率と勝てる参院選で長州・田布施撃墜も視野>

 国民から見て決して誉められたことではないが、アメリカの大統領との関係が永田町の最高の防護服である。関係がよいと、自民党内に敵なしだ。バイデン・プーチン戦争に絡んで、岸田はバイデンに相当な貸しを作った。これが安倍と岸田の関係を逆転させてしまった。

 内閣支持率もまずまずだし、参院選での敗北は想定できないほど。以上が「安倍何するものぞ」の気概となっているのであろう。このことを一番理解し、恐れているのが、安倍本人である。

 これまでは、小さなことでも議員会館の安倍事務所へのこのこと、まるでやくざ親分のところにあいさつするような、無様な姿は今後は無くなるかもしれない。攻守所を変えてしまったのだ。


<注目の法務検察人事と林芳正の長州征伐>

 安倍について国民がよく理解していることは、加計孝太郎事件・河井1・5億事件・桜事件などの安倍の首相犯罪。法務検察がまともであれば、今日の安倍は存在しない。安倍の清和会乗っ取りも論外である。

 反対に岸田の側は、誰を法相に起用するのか。正義を貫く御仁に就任を要請すれば、安倍の政治力は即ゼロに落ち込む。内閣改造人事は法相人事に永田町の注目が集まる。

 並行して安倍のもう一人のライバル・林芳正外相による長州征伐の行方が、安倍・岸一族の命運を左右するだろう。平家一門が壇ノ浦に追い詰められる日もそう遠くないのかもしれない?琵琶法師の平家物語が、にわかに現実味を帯びてくるのかどうか?

 以下に時事通信の記事を貼り付ける。

(時事)「防衛省の島田和久事務次官が1日付で退任した。年末に国家安全保障戦略などの改定を控え、皆さんの力で大いなる成果を出してほしい」。島田氏は1日の離任式で、幹部職員らを前にこう訓示した。関係者によると、岸氏の実兄である安倍晋三元首相も、島田氏の交代に反対した。島田氏は、201212月から約6年半、首相秘書官として安倍氏に仕え、現在でも関係が深い。今回の人事は、防衛費増額をめぐる政府・自民党内の対立が原因との見方がある。安倍氏はかねて、大幅増を求める発言を繰り返してきた。政府が先月閣議決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」をめぐっても、「国内総生産(GDP)比2%」に言及した上で、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と明記させた。こうした動きに対し、官邸幹部は「一線を退いた人は発言を控えるべきだ」と反発。島田氏を退任させることで、安倍氏をけん制するとともに、安保戦略などの改定論議を、岸田文雄首相の主導で進める狙いがありそうだ

2022年7月4日記(東芝製品・サントリー・トヨタ不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)