危ない侮辱罪の厳罰化<本澤二郎の「日本の風景」(4381)

<戦争反対運動阻止の言論・表現の自由を奪う巧妙な手段か>

 11年を経た311の東電フクシマは、依然として何も変わっていない。念のため、昨日の夕刻前にニュースを聞こうとしてラジオをつけた。国会中継をしていた。フクシマの猛毒トリチウム汚染水の海洋投棄を取り上げていた。野党の委員長質問か、と聞き耳を立てた。違った。優しそうな声の女性議員が、形だけの追及をして閉会!悲しい。これが311向けの日本の最高機関である。


 昨夜と今朝のインターネットの情報のなかに国会質疑はなかった。政府・東電という原子力ムラに服従する議会を露呈していた。他方、隣国では見事な選択が行われていた。与党・大統領府お構いなく、不正腐敗をあぶりだしてきた検事総長が、その後、野党の統一候補として大統領選挙に出馬、大接戦の末、勝利した。日本の検事総長・林真琴とは、恥ずかしくて比較など出来ない。そういえば犯罪元首相のもとへと、現職の首相がお伺いを立てる永田町ではないのか。


 今新たな不安材料が飛び出してきた。平和憲法を擁護するために戦争反対を叫ぶ市民や、政府の不正を追及する言論界に対して、右翼政権が新たな武器を手にしようとして、そそくさと危険な法改正を強行成立させようとしているではないか。侮辱罪の厳罰化である。法務省の法制審議会は、議論もせずに法案化しようとしていた。


 「共謀罪と特定秘密保護法と今回の侮辱罪を、右翼・強権・独裁政権が乱用すると、今のロシアの反戦運動に対する取り締まりと同じことが起きる」と専門家が警戒警報を鳴らしている。

 女性の人権保護のための、第二のTBS強姦魔を誕生させないための強姦罪厳罰化は棚に上げていることからすると、右翼政権がやろうとしていることは、明らかに均衡を欠いている。


<戦争反対者拘束の巧妙な手口に似ているようで危うい>

 永田町に関心を抱いているベテラン弁護士は「自公維主導で、主権者の言論・表現の自由を奪おうとしている」と厳しい分析をしていた。これに国民民主党という、有権者を欺くような党名の政党が加わると、まさに21世紀の翼賛議会によって容易に強行されるだろう。


 唯一の歯止め役の言論だが、その代表的な新聞を購読している元自民党本部職員が「昔の朝日と今の朝日は異質。政府広報に徹する女性記者ばかりだ」と嘆いている。彼は都内の高層マンションに住んでいるが、大半の住民が新聞を取っていない。「朝日は自分だけだ。いつか読まなくなるだろう」とも予言してきた。

 権力を監視するという責任を果たそうとしているジャーナリズムは、今では日刊ゲンダイと多少は東京・中日新聞くらいか。これも悲しい。そのはずで、プーチンの仲間である安倍晋三らは、この時とばかりに便乗して、日本の核保有を叫び、それを宣伝する新聞テレビばかりではないか。


<世界の大勢に逆行=共謀罪・特定秘密と結びつけると誰でも拘束>

 各国の法制に明るい法律家は「世界の大勢に逆行している。各国とも刑罰以前の問題として処理している。今回の法制審議会の対応は異様だ」と鋭い指摘をしている。


 「それこそ共謀罪などと結びつけると、国民は声を発することが出来なくなる」とも警鐘を鳴らしている。普通の平和国民が、極右の権力者によって、窒息させられる可能性さえ否定できない。自民党や公明党にまともな判断をする人物はいないのだろうか。


<法制審議会は形骸化、名存実亡の悪しき権力者の傀儡審議会か>

 日本の検察を友人らは「税金泥棒」と呼んでいるが、こうした当たり前の叫びが「侮辱罪の厳罰化」によって抑え込まれる可能性が高い。ネットでさえも本心を明かせなくなる警察管理国家となろう。一連の戦前回帰の流れなのだ。


<フクシマの子供・妊婦を県外に逃がせと叫んだ義士に侮辱罪で口封じ>

 昨今の野党不存在に、怒り狂う戦争に反対市民は少なくない。現に311のフクシマで、子供と妊婦を県外に逃がそうと必死で運動していたジャーナリストに対して、原子力ムラは侮辱罪で刑事告訴、口を封じてしまった。

 現在の侮辱罪でも乱用すると、市民の活動を抑え込んでしまう。厳罰化が加わると、簡単に拘束される暗黒時代が始まることになろう。

 言論界・市民の覚醒を強く求めたい。

2022年3月11日記(東芝製品不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)

社説:侮辱罪の厳罰化 拙速な議論は禍根を残す | 毎日新聞

https://mainichi.jp/articles/20211107/ddm/005/070/026000c

 http://www.asyura2.com/2002/dispute3/msg/726.html