アメリカの良心<本澤二郎の「日本の風景」(4363)

<バイデン外交は寛容さが全くなく間違いだ、がワシントンの良心>

 今から50年前の1972年のニクソン米国大統領の電撃的訪中の際の通訳が、現在も健在だった。TBS記者が単独会見を敢行してくれた。当時の米外交官の見識に感銘を覚える。取材した特派員は、元ワシントン支局長の強姦魔と天地の開きを感じた。彼はジャーナリストである。


 秘密好きのニクソンは、毛沢東との大事な会談において、側近のキッシンジャーを同伴させたが、肝心の通訳を外した。従ってニクソンもキッシンジャーも、中国人通訳を通してしか、内容を理解していなかった。


 米元外交官の通訳・フリーマンは、台湾問題に対する毛沢東コメントを、間違って理解していたニクソン外交のことを、現在も忘れることが出来ない。当然であろう。自国の通訳を使わなかったニクソンは、大統領として問題があった。その先にウォーターゲート事件が待ち構えていたのであろう。


 通訳は相手国の歴史だけではなく、その国の社会や文化、人々の価値観などを理解していなければ、正確な通訳は出来ない。其の点で、通訳外交官の養成と、対応するポストを用意する必要があろう。おそらく、日本の外務省にも本物の通訳はいないはずである。


 日本や欧米の要人が「自由で民主主義」という価値観を振りまく時の、この根幹にある価値観、すなわち寛容の有無が不可欠である。相手や相手国民に対する思いやりが、外交を成功するために重要であるが、今はこれが欠落している。寛容のない外交的主張は、昨今日本では安倍晋三とその腰ぎんちゃくの高市早苗に代表されるが、それに小躍りするのは、決まって右翼がかった一部の人々だけだ。


<ロシアや中国に対する責任の押しつけを米リベラルは反対>

 昨夜、Youtubeでテレビ東京の元モスクワ特派員の「ロシアの目線」での解説報道を見て、なるほどと思った。第二次世界大戦最大の被害国は、旧ソ連、いまのロシアである。

 ヒトラー侵略によるモスクワ・キエフ陥落などの悲惨な死者数は、他国を飛びぬけて圧倒している。大戦最大の被害国といっていい。日本敗戦時の日本兵捕虜の抑留や北方領土占拠は、日本人にとって耐えがたいことだが、一方的にモスクワを非難するだけでは、外交決着は無理だ。


 米外交官のフリーマンは「アメリカの影響力がウクライナに及んでいることに対する強い反発」「従ってそうではないことを示せ」となる。ウクライナのNATO化はやりすぎだ、と指摘している。


 ウクライナは旧ソ連最大の穀倉地帯で、唯一ともいえる大工業地帯だったことさえも忘れている者がいる。ロシアが生き延びるための、手放すことが出来ない地域という経済的理由がある。そこがワシントンに管理されるということは、ロシア人にとって耐えられないだろう。おいそれと砲弾を撃ち込むことは出来ないのだ。


 NATOの欲望・ワシントンのそれを抑制する方式を打ち出せる外交が、ワシントンに課せられていることになろう。それがバイデンには出来ない。万一、戦争になれば?絶対に避けねばならない。ここはアジアの日本外交の出番だが、今の政府に期待しても無駄だろう。G7にただ同調するしか能のない日本外交が悲しい。


 フリーマンは、米国の対中外交にも釘を刺す。「中国が台湾に軍事力を使う必要性を感じさせない状況を作れ」と進言している。真っ当な外交提案である。

 米国の中国とロシアに対する外交は、基本である寛容さが欠落して、事態を悪化させている。


<米民主党の失敗はサンダース上院議員を葬った罪か>

 筆者は、1993年に1か月かけて米国の中枢を取材して回った。「読売改憲論の巣がどこかで見つかるかもしれない」という誘惑に駆られてのことだった。

 多くの左翼的人士は、日本の先祖返りの元凶はワシントンと信じて疑わない。その証拠を見つけようとして、ワシントンやニューヨークその他全土を駆けずり回った。結論は「先祖返りの元凶は読売や今の日本会議、安倍晋三ら戦争犯罪者の野望」との結論に達した。犯人は東京だった。


 ワシントンの良心に安堵した。そのことに日米外交の中枢で活躍してきた第一級の宮澤喜一が、その通りだとお墨付きの手紙をくれた。何でも元凶はワシントンと決めつける前に、ワシントンの良心との接触を図れといいたい。宇都宮徳馬はそれを実践していた。


 戦争犯罪者の岸信介の一味が自民党に巣食っていることに、平和国民は気付くべきである。悪魔は、東京に存在する!日本の外務省にも野田英二郎ら護憲リベラルの外交官がいる。彼の後輩らには声を上げてほしい。


 ワシントンには、バーニー・サンダースとその仲間が沢山いる。バイデンだけではないワシントン人脈との交流が、日本の政治家に求められている。サンダース80歳、今どうしているか。彼の声を聞きたい。

 トランプもそうだったが、バイデンも死の商人・米産軍複合体にからめとられている。日本は、ジャパン・ハンドラーズに外交を委ねてはならない。強く指摘しておきたい。

2022年2月23日記(東芝製品不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)


元外交官 フリーマンさん
「ロシアは、アメリカの影響力がウクライナにまで及んでくることを拒もうとしているのです。ロシアの行動のメッセージは『ウクライナに侵攻する必要性がない状況にしてくれ』ということです。そしてそれは台湾問題についても同じです。中国が台湾に対して、軍事力を使う必要性を感じないような状況を作ることが重要です。それは外交の仕事であって、軍事力を見せつけることは助けになりません」 TBS報道)