岸田内閣の限界<本澤二郎の「日本の風景」(4328)

<原子力ムラに屈し脱原発を公約できなかった罪と罰>

 施政方針の概要を知って、多くの国民は期待外れの岸田内閣に元気を失った。昔の宏池会とは全く違った。国民の命・健康に対する配慮などなかった。利権と腐敗の象徴である原子力ムラの威光ばかりで、改憲軍拡の107兆円の莫大な超借金のバラマキ予算に、大衆にとってため息をつく2022年1月17日となった。


 そのためであろう、隣国のミサイル実験などに市民は無関心だが、一部の右翼的な人たちは軍拡向けに必死にわめき、それに政府も同調していた。それよりも人びとは、27年前の阪神淡路大震災と10年前の東北大震災と、直前のトンガ沖の海中大噴火など、いつ襲来するかと地震と火山の行方が気になって仕方なかった。


 だが、岸田内閣の施政方針演説では、案の定、脱炭素は当然のこととして、肝心要の脱原発公約を無視した。それどころか、トンガ沖の噴火にかこつけて「やはり原発がないとだめだ」という原子力ムラの意向を浮上させていた。


 いま政治の役目は、原発を止めて、54基すべてを廃炉にすることである。そうでないと日本の未来はないのだから。


<東電フクシマ原発廃炉に100年かかる日本の前途>

 多くの国民は、フクシマ原発の事情に無関心をかこっている。原子力ムラによる、4兆円五輪賭博といえる、壮大なるフクシマ隠ぺい策略とコロナ疫病問題などで、東電フクシマ原発のことを忘れかけている。罠にかかった羊のようだ。


 過去を忘れる人間は、日本人の特性かもしれないが、しかし、それでやり過ごすことは出来ない。ふくしま放射能はいまも多くの市民の命と健康に対して、重すぎる禍根・苦痛を与えている。低線量の内部被ばくは恐ろしい。チエルノブイリが証明している。


 何としても、脱原発へ、そのための廃炉にするしか方法はないのだが、東電フクシマ原発の廃炉には100年かかると、内外の専門家は予想している。膨大な量の猛毒トリチウムの汚染水にも、人類は立ちすくんでいる。


 海に垂れ流すことに、多くの日本人は内心反対している。隣国も、である。強行すれば、太平洋から日本海・インド洋の魚介類・海藻が食卓から消えるだろう。それでも強行することが出来るのか。原子力ムラの意向だとしても、厳しい選択であろう。


<第二フクシマに怯え続ける首都圏と関西圏の悲劇>

 日本は、世界でも有数の火山大国で知られる。地震大国でもある。

 専門家は、茨城県の東海村の核施設や福井県の原発を、特に警戒を呼びかけているが、これの対策など打てるわけがない。


 仮に巨大地震が発生すれば、第二のフクシマどころか、被害は首都圏や関西圏を巻き込む。壊滅的な打撃を与えることになる。

 日本では、核エネルギーは断じて容認してはならないのだ。賢明なニュージーランドに原発はない。大地震国ゆえである。IAEA職員は、日本のような地震と火山の上に、54基もの原発を作った異常さに驚いているというが、当たり前のことであろう。


 戦前の偏狭なナショナリストの岸信介・正力松太郎・中曾根康弘・渡辺恒雄ら原子力ムラの面々、協力する電力各社、そして東芝三菱日立の原子炉メーカー、政府を操る経産省の悪魔のような官僚群らを成敗するために、主権者はどう立ち向かうべきなのかが、いまも問われ続けている。


 騙されるだけの羊の群れでいいのか。子供や孫たちの未来を奪っていいのだろうか。


<放射能被ばくと気候大変動・地球温暖化で沈没不安の日本列島>

 フクシマ200万県民のすべてとは言わないが、相当数の市民は今も低線量の放射能の被害を受けている。それでいて、まともな健康診断は為されていないと聞いた。福島県知事からして経産省原子力ムラの出身と聞かされて、愕然とするばかりである。


 特に10年前に幼子だったおよそ30万人といわれる若者の健康は、果たして万全といえるのかどうか。


 何度でも繰り返すべきだろうが、原発被害は放射能だけではない。想像を超える、膨大な高温の汚染水を海に流し込むことによる、海の環境激変による影響が、地球温暖化・気候変動の元凶として知られている。世界の原発400基から、それがずっと継続、昨今の異常気象を引き起こしている。


 海水の高温化によって、大量の水蒸気と共に、海中の二酸化炭素も大気中に巻きあがる。それはガソリン車や石炭火力発電のそれを優に超えている。


 正月早々から原子力ムラ機関紙として悪名高い読売は、小型原発による核エネルギー派の生き残り作戦を報じている。確か自民党の悪役・甘利明も同じことを吹聴していたと記憶している。


 事情通は「連中は生き残ろうとして、新たな仕事を見つけて、利権収入を得ようともがいている。恐ろしい原子力ムラであろうか」と指摘した。地球も生き物も原子力ムラに、このまま殺されるのであろうか。


 人は「日本の内閣は、野田豚から安倍晋三・菅義偉・岸田文雄になっても、原子力ムラに操られている。無論、311の時の菅直人は、原子力ムラによって引きずり降ろされたものだ」というが、悲しいかな日本の前途は危ういままだ。コロナどころではない!事態はもっと深刻だ!

2022年1月18日記(東芝製品不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)