60点政治に失敗<本澤二郎の「日本の風景」(4221)

<幹事長・政調会長人事に失望感!不合格人事露呈で多難な船出>

自民党保守本流・宏池会から久々の総裁誕生に対して、多少の期待をかけて見守っていたが、党三役人事で岸田文雄が「民主主義の危機」を解消するという公約とは裏腹の、原子力ムラ・核武装派向けの、極右体質の政権であることが露呈した。


 自民党は、昔から「60点政治」を目標に国民の理解を得る努力をしてほぼ政権維持に成功してきた。今回の岸田人事は「民意に応える宏池会政治」とも真逆の体制を強行してしまった。いわば野党に塩を贈ったような布陣で、総選挙に臨むことになる。60点どころか、甘く見てもせいぜい40点だ。


<死に物狂いになって忠実な女を幹事長にと必死になった安倍>

 「政界に心友はいない。すべて政友ばかりだ」と筆者に明かした中川一郎は、間もなく「星影のワルツ」を歌って自殺した。

 安倍にとっての忠実な家来は、女議員である。松下政経塾で改造された極右を幹事長に据えよ、と猛然と岸田と細田派に圧力をかけ続けた。「女の忠誠で、豚箱行きを阻止しようという安倍の執念は、それこそ死に物狂いだった」と清和会OBが連絡してきた。


 「靖国参拝・台湾有事・歴史認識では、隣国との戦争も辞さないカルト女議員を起用するのは無理だ。岸田は、麻生をダシにして安倍を説得させ、傷物の甘利明を幹事長につけた。原子力ムラにとっては、甘利は二階俊博よりも強力だ」と事情通は明かす。確かに甘利の前歴も芳しい実績はない。


 甘利の父親は「農協のおじさん」風情で、河野洋平の配下だった。永田町では地味な存在だったため、まさか倅が安倍と麻生の側近という二刀流の「ムサシ」だったとは?河野太郎も気付かなかったろう。


 安倍の死闘は総裁選でも見せた。カルト統一教会の自民党員にも手を打った。神主の神道・日本会議はむろんのこと、細田派議員にもドーカツ電話をかけまくり、河野支持派をひっくり返してしまった。「今回初めて大金を使った」と事情通も驚いている。


 御用記者・評論家も総動員して「河野叩き」に狂奔、はてはネット世界の隅々にまで、それは及んだ。久しく姿を隠していた経産省・原子力ムラの側近・今井も走らせて、その見返りに岸田人事にも介入、安倍の命がけの意思を伝えているという。


 「宏池会人事はまるで見えてこない」との宏池会内部のボヤキが聞こえてきている。


 幹事長・政調会長が極右・原子力ムラで固めただけでなく、内閣の女房役の松野とかいう細田派議員は、これまた松下政経塾の右翼の代表格だ。岸田内閣の骨格がこれでは、もはや菅や安倍と変わるところがない。


<安倍・麻生傀儡政権?で国民の期待は消し飛ぶ>

 菅から看板が岸田に代わっただけなのだ。


 過去に宏池会に会津の伊藤正義という大平正芳の盟友がいた。彼にも内閣を組織する機会があったが、人事は自由にできないという縛りを知ると、彼は「看板を替えただけでは国民がかわいそうだ」といって蹴ってしまった。


 安倍・麻生傀儡政権に、宮澤喜一など先輩首相経験者らが泉下で怒っている様子が分かるだけに、なんともわびしい限りだ。国民は納得しない。


 岸田の「民主主義の危機」認識は、国民のそれとは違って、単なるハッタリでしかなかった。


<「民主主義の危機」解消には程遠く>

 安倍と菅の内閣を総括すると、国民の少数の支持でしかないのに、国会の議席は3分の2になって、これが安倍を有頂天にさせてしまった。したがって、安倍を舞い上がらせた公明党創価学会の、特に太田ショウコウらの罪は計り知れないほど大きい。


 日本沈没の根源は信濃町なのだが、新聞テレビは電通広告費に配慮して批判できない。哀れさを通り越している。国税庁も手が出せない。カネがないという日本財政だが、カネが唸っている超格差にメスが入らない。


 自民党の神道・極右化と独裁政治は、信濃町の100点満点の実績であって、神社本庁・靖国神社や伊勢神宮・出雲大社のカルト原始宗教の成果ではない。


 アベ独裁で日本沈没は、岸田になっても変わらない。日本の民主主義の危機の行方は、総選挙の結果次第となるだろう。しばしお預けだ。


<宏池会のリベラル伝統を放り投げてどこへ行く?岸田・宏池会>

 宏池会に出入りしていたころは、まだ池田勇人の仲間がいっぱいいた。彼らに宏池会政治とは、どういうものか、と繰り返し、聞いたものである。


 経済を重視して、国民生活を支えていく、という至極当たり前の返事が返ってきた。池田蔵相秘書官・池田内閣の官房長官を歴任した黒金泰美は「国民の声を政治に反映させる、それが宏池会。玩具(おもちゃ)=武器弾薬を買うことではない。日本の安全は、優れた平和外交で対応していくもの」と明快に語ってくれた。


 宏池会の議員は、一人として改憲を口にする右翼議員などいなかった。正に宏池会リベラルは、中道路線であって、岸信介の「死の商人」向けの政治ではなかった。


 核武装の時代の到来を、宮澤は「もはや戦争ができない。日本の憲法9条が光り輝いてきた」と堂々と公言していた。後輩の池田行彦や加藤紘一ら皆そうだった。安倍との乖離は天地の差があろう。

 岸田は、安倍や麻生の色に染まってしまった。宏池会は死んでしまったものか。自民党没落の因であろう。


<一将功なりて万骨枯る!泉下の池田勇人・宮澤喜一は失望>

 海水温の上昇による多量の水蒸気が、台風・ハリケーン・大豪雨の大型化の元凶であるが、その根源は、世界の400余基の原子力発電所から垂れ流される膨大な量の温排水である。


 原発の恐怖は、放射能だけではない。気候変動で、地球・自然を破壊している。人間の住めない、生きられない大地へと変貌させている。

 そうだというのに、岸田人事は、これに真っ向から反対する、原子力ムラ人事を貫徹したわけである。日本列島破壊人事といっていい。科学者はみな知っているが、声を上げる現役の科学者は一人もいない。

 税金で懐を膨らませている科学者は、声を上げない。新聞テレビも、カネに左右されて、国民の健康に配慮しない。


 政治の変革が不可欠だ。しかしながら、永田町の自民党総裁選は、分かりやすく言うと「一将功なりて万骨枯る」の典型である。国民の覚醒を求めるほか、打つ手はないだろう。せめて60点政治でないと、泣いてしまう!

2021年10月1日記(東芝製品不買運動の会代表・政治評論家・日本記者クラブ会員)