崖っぷち岸田・宏池会<本澤二郎の「日本の風景」(3911)

<安倍1・5億円事件=河井が駄目なら創価学会=菅・二階の宏池会潰し>

 理念・信条無縁の、生き馬の目を抜く永田町秋の陣本番である。護憲リベラルの自民党の名門・宏池会を叩き潰す策略が、安倍晋三が断行した河井夫妻への1・5億円事件で、再び燃え盛ってきた。

 1・5億円事件こそが、安倍辞任の引き金となったと指摘する見方は、事情通であれば、ごく自然である。林真琴検察が矛を収めた理由とみられる。どっこい、正義と勇気の市民グループは、林を検察官適格審査会に掛ける手続きを済ませて、罷免を求める運動が本格的に始まった。


 上川陽子の法相起用で、完全に林検察を封じ込めたと思い込んでいる菅義偉と二階俊博の1・5億円事件の、新たな攻勢が始まった。


 昨年7月の参院選で河井夫妻を徹底支援した安倍と菅・二階と公明党創価学会は、岸田・宏池会の溝手顕正を打倒、宏池会に致命的打撃を与えたものの、広島地検は1・5億円事件で河井夫妻を逮捕した。

 結果、自民党広島県連は、宏池会復権の機会を手にした。第二、第三の溝手擁立で勝利すれば、墜落した岸田浮上を約束させる。岸田にとって捲土重来の好機である。


 この7年8か月の岸田は、宏池会の伝統である護憲リベラルの旗を降ろし、安倍・国粋主義の軍門に下って、借りてきた猫のように、なすすべがなかった。

安倍と麻生の甘い言動に屈した岸田は、いうなれば宏池会二代目会長の前尾繁三郎そのものだった。


 しかし、安倍後継で大敗したことから、ようやく覚醒したと見たい。そこに菅と二階が恐怖感を抱いた。「岸田を第二の石破にしろ」が、安倍1・5億円事件の継続戦争である。


 「河井が潰されても、公明党創価学会がいるよ」という策略浮上が、今の時点ではっきりとしてきた。


<1・5億円事件と公明党創価学会への資金の流れに注目する宏池会>

 溝手敗因は、安倍の1・5億円投入による買収工作に尽きるが、検察の捜査で判明したことは、このうちの3000万円程度である。残りが、安倍の4人の秘書と安倍本人、そして大掛かりな公明党創価学会への謝礼金、これが政界の常識的な見方である。


 もうずいぶん前の話であるが、元三菱銀行労組委員長から政界入りした議員は、早くから創価学会の協力を得て当選してきた。ある時、側近秘書に「謝礼はしているのか」と問いただしてみた。


 彼は「それは当たり前のことさ」とぶっきらぼうに答えた。「この世に無報酬の支援などない」のである。選挙応援しての謝礼金を、誰がどのように処理してきたものか。これは重大な事件である。



<安倍1・5億円のうち3000万証拠で打ち切った林真琴は罷免が相当>

 今回、初めて明かす政治の真実である。地元学会幹部の懐で止まってしまうものか。それとも公明党か創価学会本部に流れるのか?今はこれが全国的に繰り広げられていることになる。3分の2議席の裏事情である。


 1・5億円事件は今も闇である。法廷での河井夫妻の証言は、むろん、真実を語っていないと見られているが、公明党創価学会への自民党資金、それが政党助成金だと仮定すると、それこそ自公連立は空中分解することになろう。


 1億2000万円を捜査しない林検察は、明らかに罷免の対象に相当するだろう。だれか異論があれば、固有名詞でもって反論願いたい。林は、検察官適格審査会に掛けて、審判を仰ぐしかない。



<被爆地・広島が宏池会の牙城=広島3区でリベラルの旗死守へ>

 国民が注目する理由は、岸田・宏池会の帰趨というよりも、菅と二階に率いられる公明党創価学会候補によって、被爆地に咲いた護憲リベラル・非戦の自民党が崩壊することのマイナス面である。


 日本から護憲リベラルの旗が消滅することのマイナスは、計り知れないものがあろう。長崎もそうだが、二度と戦争をしない日本国憲法を尊重し、擁護する義務を放棄した後の、右翼化する軍拡日本と東アジアの関係悪化は、それこそ前途を暗くするだけである。

 戦前回帰は断じてNOである。帆船・日本丸による安全航海が、国民の理想である。昨今の永田町において、リベラルの宏池会の城は、平和を願う国民にとって、守るべき価値ある派閥であろう。

2020年11月21日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)