仮面の幹事長<本澤二郎の「日本の風景」(3902)

<二階俊博は本当に親中派の国会議員なのか?>

 トランプ政権末期において、米シンクタンクから安倍の腹心と共に「新中派」とやり玉に挙がった自民党幹事長・二階俊博は、バイデン次期大統領に菅と共に、心から安堵したと見られている。菅は本日、念願のバイデンとの10分間の電話会談に満足した。ところで、菅を支える二階は、本当に親中派なのだろうか。

 1972年の日中国交回復の時点で、田中派若手の一人として日中友好に汗を流したという事実は、全くない。それどころか、日中友好団体の一員としての

活躍を、一度たりと耳にしたこともない。


 だだ、数年前から観光利権のボスとして、日本の旅行団を率いて習近平を喜ばせたことから、注目を浴びるようになったことは確かである。振り返ると、日中友好議員連盟という日中間の大事なパイプも、いつの間にか消滅してしまった。清和会政権に比例して、同議連会長は右翼改憲派の高村正彦が就任して以来、名存実亡の状態に置かれてしまった。


 文字通り、日中友好団体が衰退する中で唯一、日本の観光事業盛り立て役のリーダーとして、最大の顧客先の中国をターゲットにした二階である。この点は間違いではなかった。日本の観光資源は、中産階級化した中国人民の日本訪問で、飛躍的に伸びた。観光を守備範囲とする元運輸相の経験が、観光利権に飛びつかせたものであろう。

 問題の「Go Toトラベル」の主役を演じたのだが、果たしてコロナが見過ごすことはなかった。それに血税投入も、弱者には手が出ない高額所得者向けのトラブルであった。

 いえることは、元県議の二階、元市議の菅の相性が、政権掌握の鍵だったかもしれない。


<中国の日本語新聞で「菅首相は偏った歩き方はしない」と太鼓判>

 二階は、中国の日本語新聞で「菅が安倍後継の適任者」「ほかにいなかった」と断言して、麻生太郎をあざけるかのように、自画自賛することをためらうことなく披歴している。

 「ことし6月、安倍の健康問題が出てから、菅と私は何度も会合をもって、対応を協議した。安倍の辞意表明の2日後、二階派は菅を全力支持を正式に表明、これが菅の出馬の決め手となった」などとも打ち明けている。


 「菅は当然、長期政権になる」とも胸を張って、自らの野望をひけらかしている。麻生や岸田文雄へと挑戦状ともいえる。

 そして、駄目押しが菅内閣の日中関係について「偏った歩き方はしない」と豪語した。事実なら東アジアの平穏のために評価したいが、してみると、こと日中関係は「二階ペース」で仕切るというのだろうか。


 菅内閣は、二階内閣というのだろうか。安倍に続く長期政権にする、ともいう。大変な自信家なのだ。空前絶後の財政悪化は破綻寸前である。電通五輪も風前の灯火である。「人命よりも利権優先」という電通五輪は、実現するだろうか。コロナ退治最優先のバイデンが五輪に来るわけがないのだが。

 当の電通は、五輪スポンサーに見放されて、目下、リストラで生き延びようとしているではないか。安倍のぶち上げた経済のV字型回復など、出鱈目エコノミストでも断言することはできないだろう。


<政界随一の政界遊泳術に長けた政治屋>

 20年の政治記者、30年の政治評論活動をしてきて、同じ大学卒業生というのに、不思議なことに、これまで一度も二階の事務所の扉をたたいたことがないのである。

 ことほど地味で目立たない存在だったのだろう。それとも、大器晩成の人だったのか。彼一流の政界遊泳術のせいだったのかもしれない。遠藤三郎秘書から和歌山県議、ついで自民党議員、そこから新進党、自由党、保守党、保守新党と渡り歩いて、元の自民党に復党、旧中曽根派の流れをくむ志帥会(当時は伊吹文明会長)に合流したことから、俄然、党内外での落穂ひろいに徹した。


 この中には、安倍が宏池会つぶしに用意した、河井夫妻への1・5億円事件も含まれる。カジノ利権にも首を出すなど、利権に目がない御仁である。

 他方、4年の自民党幹事長として政党助成金200億円の大金を動かせる人物ともなって、周辺のマスコミ関係者にも、小遣い銭を流せる身分にもなったようだ。

 安倍再選論を口癖にすることで、とうとう幹事長の椅子を手にし、その間、官房機密費を握る菅と連携、時には安倍人事に口ばしを入れるようになり、ついにはキングメーカーよろしく、現在は天下を盗った気分のようである。


 ちなみに現在では、親中派議員はいなくなった。しいて言えば、福田康夫や鳩山由紀夫くらいか。東アジアの平和と安定の基礎は脆弱すぎる。

2020年11月12日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)