機能不全<本澤二郎の「日本の風景」(3826)

<官邸・霞が関どころか議会も夏休みで休眠状態のコロナ無縁日本>

 このコロナによる重大な時期に、まるで渦に巻き込まれ、難破したかのような日本丸は航海をやめてしまっている。病める船長は、はるか東方沖の巨大船団の行方に一人気をもんでばかりいて、仕事に熱が入らない。甲板では「いつ辞めるのか」「いつ引きずりおろすか」でやきもき、次期船長の品定めに熱中している。


 かくして船内にはびこった疫病にイラつきながら、チケットを購入した乗客は、一向に前進しない日本丸に怒りを爆発させているのだが、先行きの目途は全く立っていない。船内の食糧は、枯渇してきて心細いことおびただしい。エンジンを動かす燃料も。まるで夢を見ているような、日本政府・霞が関のサボタージュに加えて、議会も夏休みというありさまに声も出ない。


 官邸と役人と議会人が、休みを取り始めてもう2か月以上も経っている。地球全体が右往左往する中で、日本のかじ取り役は何もしていない。国の組織が休眠状態で、マスコミは人事というあらぬ方向に人々の関心を向けている。


<為政者・官僚にとってのみ極楽浄土の日本列島でいいのか>

 多くの庶民は、昨年暮れから切なくも厳しい生活環境に追いやられている。

 政府はというと、莫大な借金をしながら、それでも一人10万円を支給したり、あるいは中小企業、旅行業者に金を配ったりしているが、本来、それを役所が作業をしなければならない。実際は違った。彼らは電通などに丸投げ、電通はまた子会社に丸投げして原資をかすめ取っていた。もうそれだけで、実に100億円以上の血税を吸い取った。


 役人は全く仕事をしないのだ。仕事をしなくて高給を懐に入れている。それは「GO TOトラベル」その他でも見られた。存外、この手の血税の無駄遣いは、洗い出すと相当あるのであろう。知らぬは奴隷国民ばかりなのだ。


 真っ当な野党議会人が存在すれば、それだけで政権を打倒する場面だが、今の国会議員は、信念のない石ころのような人物が目立つ。


 かくして、コロナ危機も、日本の為政者や役人にとっては、むしろ好都合なのだ。ごく一部に例外はあろうが、全般的に見ると、財政破綻寸前の日本丸が、彼らにとって極楽浄土であるらしい。


<コロナ危機でも2か月も無奉仕=それでも高給・ボーナスの楽々生活>

 日本という国は、安倍晋三だけではない。霞が関の官僚たちも永田町の与野党議員にとっても、文句なしに恵まれた世界なのだ。


 世襲議員が跋扈する議会一つ見ても理解できるだろう。

 安倍が仕事をやめた6月18日からだと、とっくに2か月以上も経った。この間、仕事をしていた国会議員?は、全体のごく一部である。


 本来であれば、1分でも無駄にできないコロナ危機下の議会人や役人のはずであるが、実際はその反対である。かつて官邸や自民党本部、霞が関で仕事をしてきた御仁の目には、電話をしてくるたびに、仕事をしないで高給を食む輩に対する評価が、ことのほか厳しい。


 高給とボーナスをどっさりもらって、仕事をしない議会人と役人たちの、楽々生活という経済格差・職業格差は、人種差別にも相当する、ある種の許されざる差別であろう。IMFのデータを借りてこなくても、日本の財政は世界一悪い。最悪の経済破綻するような国である。


<働く場所が消える、それでも若者を政治無関心に追いやる電通か>

 「日本が駄目なら中国やアメリカがある」という時代は、もうとっくの昔に無くなってしまった2020年が、今後も長く続くことになる。


 地方創生などと馬鹿の一つ覚えも通用しない。地方都市の銀行が消えていく。デパートも無くなっている。これでは地方創生も、言葉の遊びでしかない。事程左様に地方は廃れ切っていく。打つ手はないかのようだ。


 既に重工業・造船・鉄鋼など重厚長大産業も沈没している。かろうじて残っている車のトヨタの先行きも、そう明るくない。


 中央も地方も、働く場所がない。たとえあっても、長期間というわけにはいかない時代の到来である。それでいて若者は、サッカーやゲーム、軽薄な歌などに浮かれている。意図的にそこへと政治は追いやっている。新聞テレビを操る大魔神・電通の仕業かもしれない。

 史上最低ゆえに最長期政権を勝ち取った安倍内閣の、単なる言葉遊びも通用しない時代の到来である。足が地に付いた質素倹約で、かろうじて生きる時代かもしれない。自然との共存だ。民を重視する国では、武器弾薬は捨てざるを得ない。そうしないと人間は生きられなくなるだろう。

2020年8月26日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)