大逆転<本澤二郎の「日本の風景」(3803)

<老いた熊が傷だらけの狼に襲い掛かる政局夏の陣>

 永田町を野獣・猛獣に例えると、コロナの猛威に傷だらけの安倍晋三はオオカミ、対する老いた熊が、寝たふりをして、唯々諾々と狼に服従していた自民党大黒柱の二階俊博。


 その立場が逆転した!オオカミは、自宅と官邸内に引きこもって姿を見せない。一国の代表者として、目に余ってぶざま過ぎる。安倍に若いころから、中国共産党のことを教え込んだ師匠である、台湾の李登輝死去にも、遠慮がちのコメントで逃げた。


 側近を使っての中国批判に対して、二階は「心が小さい連中」と切って捨てる。親中派二階の、決起さながらの初めて見せた自信だ。



<「解散して何を問うのか」と安倍と麻生にかみついた二階の正論>

 1・5億円事件の核心的捜査について、肝心の稲田・林の検察が、自民党本部と安倍事務所の家宅捜索をしなかった、何のことはない、両者とも黒川弘務レベルで、事実上、安倍と手打ちをしてしまった。


 追い詰められた狼は、窮鼠猫を噛むの譬えで、早期解散に打って出ようとした。盟友の麻生に解散ラッパを吹かせて、政治資金集めのパーティーを開催させたりしたのだが、自民党内に一緒に踊ろうとする者は現れなかった。


 二階は月刊誌のインタビューで「今解散をして一体何を問うんですか」と公然と安倍に水をぶっかけた。

 まさかのゴマスリ幹事長の一撃に、全く想定していなかった首相は驚愕して声も出なかったという。そう言えば、彼が自宅と官邸に引きこもったのが6月18日以降からである。


 国内では、五輪優先のコロナ対策のツケが表面化、PCR検査の数を増やせば、記録的な感染者発覚は火を見るよりも明らかである。

 安倍が学校を閉鎖する際「2週間後が山場」と嘘をついて、もうどれくらい経過したろうか。新型コロナに対して、本物の専門家は一人もいない。誰も分からない。素人専門家に委ねての五輪優先のコロナ対策について、その元凶が大魔神の電通ゆえに、新聞テレビも真相を報道できない。


 もう1月からであるが、早期発見・早期治療という当たり前の鉄則を実行していない。運よく陰性になっても再発するし、重い後遺症が残る。

 大魔神・電通も打つ手なしである。1年延長の東京五輪も不可能だ。五輪経費の無駄遣いは途方もない金額になる。日本経済の水没を深めるだけだ。秋から冬にかけて、地獄が待ち構えると誰もが予想している。五輪どころではない。人々は生きるか死ぬか、の不安の瀬戸際に置かれている。


 二階は、コロナの実情を言外にチラつかせて、安倍の解散権を封じ込めたことになる。


<錆び付いた解散刀は抜けなかった、早期解散は雲散霧消>

 モリカケからTBS強姦魔を不起訴にした性凶悪犯罪もみ消し事件だけでも、とうに内閣はひっくり返っているはずだ。野党が死に物狂いで追及すれば、安倍は存続できなかったが、バラバラ野党が救世主となってくれた。


 これに桜事件が追い打ちをかけた。これも壮大なる公選法違反事件である。カジノ事件も起きている。これも雑魚一匹捕獲では済まない。検察にお願いして、真っ黒な大魚を見逃してもらった。


 そして元法務大臣が関与した、その実、安倍事件といえる1・5億円事件が、列島を爆発させた。だが、結果的に見ると、安倍逮捕の場面で、検察を抑え込んだ。法務検察内部には、今も黒川弘務のような人物は、いっぱいいるのである。


 国民・主権者に対する法務検察の腐敗は、底なし沼なのだ。破綻した日本民主主義を証明している。国民を裏切り続ける法務検察に、反省も謝罪もする意思はない。


 しかも、半年以上前から、新型コロナの猛威にさらされている日本である。安倍の退陣で済む話ではない。財政も経済、外交も破綻してしまっている。「辞めます」で済む話ではない。フランスであれば「ギロチンにかけられる」という場面といえよう。


<ゴマスリ幹事長の大変身、安倍後継者づくりにも奔走>

 安倍の引きこもりの実態は、官房長官の菅義偉経由で、ほぼ正確に二階の耳に届いている。「官邸の宦官」との戦いを制した、といわれる菅も、二階の後押しで元気が出てきたらしい。


 官邸の金庫と自民党本部の金庫の一体化は、強力そのものなのだ。メディア・マスコミにも流れているのであろう。「夏のボーナスに浮かれている怪しげな評論家も多い」という噂は、本当かもしれない。


 ともかく潮目は変わった。二階大変身である。言葉も動きも滑らかに早くなるものだ。要するに、ゴマスリ幹事長を返上したかに見える。安倍失墜を印象付けている。

 死に体首相を棚に上げて、次の後継者づくりが、二階の残された課題だ。その過程で、息子を後継者にすることが、彼の悲願ともなっている。


<怪しくなった安倍の幹事長降ろし、強行なら政局へ>

 解散を封じ込められた安倍の手段は、国会を開いて堂々と言論戦で反撃すればいいのだが、いまその勇気が全くない。引きこもりが唯一の生き延びる術なのだ。


 残るは人事で、菅と二階を外すことが目標になる。だが、両者はがっちりスクラムを組んでいて、隙間がない。内閣党人事は、これまでと様相が違っている。下手にやろうとすると、大やけどするかもしれない。


 人事強行なら、政局へと発展して、足元の土台がひっくり返ることになろう。動くに動けない。11月大統領選挙前にトランプとの最後の出会いが待っているが、安倍に勢いをつけるような場面は想定できない。

 それとも、李登輝仕込みの北京封じ込め作戦を主導するのだろうか。それで展望が開けるとも思えない。


<安倍側近や反中言論者を「心が小さい」とバッサリ>

 二階変身の一つは、安倍解散の封じ込めと、もう一つが、返す刀で「中国いじめは心が小さい人間のやることだ」とばっさりと切り捨てている点である。


 それかあらぬか、安倍側近で検察に助けられた甘利や、稲田朋美のワシントンの意向を忖度した反中行動に対しても「人間として心が小さい」と斬って捨てているという。


 G7外相会談で、中国封じ込めに手柄を立てたと、米国務長官・ポンペオに褒められて有頂天の外相・茂木を、あげつらっているようにも聞こえる。

 今まで完全無視をしてきたのだが、ここしばらくは自民党幹事長が、コロナ・夏の政局の中心に座った格好である。

2020年8月3日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)