赤木雅子訴状<本澤二郎の「日本の風景」(3675)

<痛ましい「うつ」「自殺」への経過に衝撃>

 世の中には変人が少なくない。その一人かもしれないが、ほかにもいた。広島地検に電話をかけまくって、河井夫妻の検察捜査に激励をしている友人の友人が、森友案件の国有地タダ払い下げ事件で、公文書の改ざんを財務省理財局長に強要され、最後は一人だけスケープゴートを強いられ、強い鬱状態から自殺した近畿財務局の、本来は公僕のはずだった赤木俊夫さん、その妻の雅子さん原告、三好雅子と佐川宣壽両被告への損害賠償の訴状(43ページ)が、自宅に郵送されてきた。


 「読め」ということだろう。さっそく斜め読みしたのだが、心優しいはずの公務員が、首相犯罪を逃れるために霞が関に指令を発したことから、財務省の担当局長が担当する近畿財務局に対して、公文書の改ざんという国家犯罪を強いたため、とどのつまりは最末端の担当者の俊夫さんが、犯罪者にされていく過程は悲惨すぎる。


 首相官邸の犯罪を一人背負わされて、大阪地検特捜部による事情聴取の時点で、赤木さんの精神は完ぺきに破壊され、死に至る無念が、事細かに記述されている訴状である。


 記者生活の大半を永田町の権力闘争の取材に追いまくられてきたジャーナリストが、訴状を読んだのは初めてのことである。職業とはいえ、原告代理人による核心的事実を、細大漏らさない記録に敬意を表したい。



<真犯人は安倍晋三・昭恵夫妻と麻生太郎>

 以上は評価できるが、なぜ安倍晋三首相夫妻と麻生太郎財務相が、被告から除外されているのか、ここが不思議でならない。


 原告の赤木雅子さんも納得できないのではないか。相当因果関係説を持ち出す必要などない。日本国民は、改ざんを指示した主犯は安倍であり、麻生であると正確に理解している。佐川はそれに順じて、強力な改ざんを部下に指示をしたもので、まさに安倍犯罪の典型である国権乱用罪であろう。これほど明白な犯罪、国家権力の乱用も珍しい。


 この重大犯罪者が、今もコロナ対策の中心人物の日本である。呪われた日本を象徴しているではないか。うまく対応できるわけがない。東京五輪も崩壊した。その損失だけでも6400億円という。これを安倍と麻生の懐から吐き出せるのか?


 不可解な法律論の極め付きは、佐川も一部負担するが、1億円もの巨費は、国の費用、すなわち血税、国民が負担をするというのだ。どなたか、納得できる日本人はいるのであろうか?



<法律家の超国家主義的な思考がこの国を危うくさせている?>

 欧米の訴訟を詳しく知らないが、訴訟社会と言われるアメリカではどうだろうか。為政者の犯罪による損害賠償を、血税で支払う?ありえないことだろう。


 刑事訴訟法もそうだが、民事訴訟法もおかしいということになる。三権分立が確立している韓国の場合はどうだろうか。


 監獄に入っている朴前大統領の不始末を、韓国民の税金で肩代わりする?ありえないだろう。そのありえない法理論を駆使する、日本の法律家の前近代性は、戦前の国家主義に洗脳されてしまっている。違うだろうか。


 訴訟法の大改革が必要不可欠であろう。強く提起しておきたい。国民が理解できない法律論など不要である。



<なぜ真犯人を刑事告訴・告発しないのか>

 森友事件は、赤木さんの遺言と手記が、国民の目に入った、その瞬間から、同事件に新たな訴訟の理由・根拠・原因が生まれたことになる。これまた常識である。


 黒川弘務検事長は抑え込むだろうが、善良な検事・検察は、再捜査を開始する責務を、国民に対して負っている。当時の女性の大阪地検特捜部長の課題でもある。すでに失格の烙印を押されているが、再捜査に協力すれば、汚名挽回の機会ともなろう。


 赤木夫人の刑事告訴、支援する市民らの告発も可能であろう。関西の進歩的な法律家の対応にも期待したい。法律は国民のためのものであって、不正腐敗の権力乱用者のためのものではない。



<「改ざん真犯人は安倍と麻生である」が全国民の認識>

 繰り返し指摘しておきたい。「赤木俊夫を改ざんの犯罪者に仕立て上げた真犯人は、安倍夫妻と麻生太郎、そして指示に従った佐川宣壽とその配下の役人である」と。これが国民の常識であろう。

 因果関係は決定的だ。報いを受けるのは、国権の乱用者とそれに従って、出世した赤木さんの上司らである。誰しもが断言できる真実で、判事の判断など不要である。


 自らの犯罪発覚を封じ込めようとした安倍が、麻生を取り込んで、佐川に指示した、その約束を果たした佐川に国税庁長官の地位をプレゼントした。これが赤木さん自殺の原因である。国民の理解であろう。



<縛りをかけられた法曹人の覚醒と法律改正が重大課題の日本>

 赤木雅子さんの訴状から、こうした記述がないのが悔しい。原因はどこにあるのか。法律家にある。国の試験で誕生した法律家に対して、国家主義は太い鎖で縛りをかけているのである。


 それは、ハサミを使って切れるような、漁師の使う網ではない。鉄の鎖である。しかし、鉄は年月を経て腐り、土にかえる。もうその時を迎えている。

 法律家が覚醒する時代である。その契機をつくってくれている、森友事件といえるかもしれない。進歩的な法律家の誕生の時である。国民を守る常識的な法律家によって、訴訟法を大改正する時であろう。


 それはまた、民主主義の日本への一里塚ともなる、そんな赤木訴状のような感じがしてならない。支援する元NHK記者の奮闘も期待したい。優雅すぎるNHKの給料を、棒に振ったジャーナリストの存在を、国民は忘れないだろう。

2020年5月5日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)