北ミサイルと2019年危機本番<本澤二郎の「日本の風景」(3387)

<イージスアショア設置などアベ超軍拡実現が目的>

 まだトランプと金正恩の38度線上の劇的な会談の余韻が残っている7月25日、北朝鮮は2発の単距離ミサイルを、日本海に向けて発射した。これに対して日本のマスコミは異常な反応を見せて、NHKを先頭に大々的に北朝鮮脅威論報道合戦を繰り広げている。

狙いは日米産軍体制の必死の要望、わかりやすく言うと、リクエストに応じたものである。武器弾薬を売り込むワシントンの死の商人と、それを導入したい東京の死の商人の期待に沿ったミサイル発射であろう。日本政府とメディアの共闘による世論操作向けということになる。そんなに難しい方程式ではない。


<北脅威論を継続して日本人に信じ込ませる策略>

 朝鮮半島は、もはや双方が武器を誇らせるような、馬鹿げた無駄なことは止めている。南北は連携して、日本のトランプをまねた、韓国いじめの経済報復措置に対抗している。

 他方、安倍の拉致問題への取り組みも、この6年間もの長期間、北朝鮮脅威論をまき散らすためという、いい加減な策略だったことも証明された形である。

 国民は、アベ自公政権の、憲法を冒涜する「戦争国家」・超軍拡路線に反発している。年金一つとっても、それどころではない。それでいて自公内閣は、空母「出雲」を先頭に、艦載ステルス戦闘機F35Bの大量購入や、地上配備型ミサイル基地・イージスアショアの秋田県設置などに本腰を入れて取り組んでいる。


 沖縄県民の意思を無視した普天間の辺野古移設にも、独裁的な手法で、公明党国交相を先頭に必死で強行している。憲法に違反する暴政は止もうとしていない。

 以上のような暴政を敢行するために、北のミサイル発射は必要なのである。冷静に考えれば、納得できる当たり前の論理である。


<ワシントンの産軍体制の要請である>

 ワシントンの経済は、軍需産業で成り立っている異様な国家に変質して久しい。そのための犠牲が、朝鮮戦争やベトナム戦争だった。その先に中東で繰り返されたアメリカの戦争だった。

 イラク・アフガンから現在、イランとの対立を、意図的に引き起こして、武器弾薬の需要増に必死のトランプは、まさに死の商人そのものと言っていい。トランプこそが、米産軍体制が誕生させたアメリカ大統領なのである。


 もうおわかりだろう。米朝和解にブレーキをかけているのは、北朝鮮ではない。アメリカの武器弾薬を売り込むことに専念しているトランプなのだ。そのためには、北朝鮮脅威論はしばらく継続させねばならないのである。


<ゴルフで動じないアベと「約束は守られている」とトランプ>

 論より証拠である。2発のミサイルに対して、従来だと髪を吊り上げて抗議するシンゾウが、ゴルフに興じて一蹴、トランプは「問題ではない」とこれまた一顧だにしなかった。


 トランプの心は「何はともあれシンゾウに武器弾薬を買わせなければならない。そのためのポーズをとってもらっているだけさ」ということなのだ。


<日本の新聞テレビのみが嘘の情報で脅威論宣伝>

 「ボルトンの日韓訪問に合わせたミサイル発射だ」「米韓合同軍事演習を再開しようとしていることへの反発」など北朝鮮の狙いを、さもありなん、といった解説を流している日本の新聞テレビは、一つとして真相を抉り出す解説をしていない。いうところのフェイクニュース・嘘情報の垂れ流しばかりである。


 ずばり秋田のイージスアショア設置実現に向けた日米政府の依頼に応えたもの、がプロの分析である。

 北朝鮮脅威論をさんざん悪用して改憲軍拡の銅鑼を鳴らし続けてきたアベ自公内閣は、今もそれを続行している。それどころか、議会での3分の2を確保のための謀略に突進している。


<アベ自公の別動隊は維新+国民民主党>

 すでに国民民主党が、アベ自公の改憲に応える宣言を、昨日、代表の玉木が公言した。同党は第二の維新である。


<2019年危機本番!>

 思うに、日本会議の改憲軍拡に向けた策略は、大きな政治的イベントを、次々と用意して推進してきている。

 嘘と買収で獲得した東京五輪、166億円かけた皇位継承祭祀、100億円かけたG20で、参院選を圧勝で手にした自公は、とうとう軍国主義本番の日本へと改編を急いでいる。


 2019年危機本番である。ゆでガエルは、いまだに居眠りから覚めない。

2019年7月27日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)