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政治屋と政治家<本澤二郎の「日本の風景」(3338)

<処女作「塀の上を歩く金バッジの面々」の読者と対面>

 過去には政治家がいた。いま政治家を探すのは一苦労だ。利権アサリの政治屋が跋扈するため、比例してやくざ・暴力団も威勢がいい。最近、1万トンもの覚せい剤が押収され、まともな国民に衝撃を与えた。経済産業省や文科省のキャリアが職場で覚せい剤を使用していたことが、とうとう発覚して、これまた衝撃を与えている。そのうちに国会議員や裁判所からも逮捕者が出るかもしれない。

 そんな時、30年前の1989年に書いた処女作「塀の上を歩く金バッジの面々」の読者と30年ぶりに会った。奇遇である。

<木更津市の「野村塾」の藤浪英子さん>

 この本は「ぴいぷる社」の恩田貢社長が本の題名を持参してきて「これで頼む」と押し切られたものである。政治記者20年に対して有無を言わせなかった。

 当時、首都圏紙東京タイムズ政治部長の要職にあったが、引き受けて出版した。これの取材から、政治屋の正体をつまびらかに見聞することができた。

 この本を読んでくれていた、木更津市の藤浪英子さんとの、30年ぶりの再会となった6月7日の梅雨入りの日だった。

 話を聞いて思い出したのだが、当時、東京新聞政治部記者から千葉日報編集局長や千葉テレビ常務を歴任した野村泰さんを中心に「野村塾」という勉強会を立ち上げた。

 いまのアクアラインが木更津市に恩恵を与えるのかどうか、単なる通過地点となって、過疎化が進行するのではないか。そのためには鉄道も敷設すべきだという立場を主張していた。

 藤浪さんも、この会に参加していて、拙本を手にしてくれた。一般人には驚愕するような政治屋の裏側に驚いたという。そのおかげで筆者のことを覚えてくれていたのだ。本との出会いである。

<30年ぶりの再会は久留里の歌声喫茶>

 藤浪さんとの30年ぶりの再会場所は、JR久留里駅前の君津市の上総公民館である。そこで「歌声喫茶 うたごえジョイ IN 久留里」の157回公演が開催され、そこで隣り合わせた。

 月一回の公演だから、もう10年以上の歴史がある。初めて聞くようなロシア民謡は閉口するばかりだが、70代のストレス解消派が100数十人も参加する熱気ムンムンの合唱老人の裏側には「病める日本」を象徴しているようにも感じる。

 

 何かをしていないとボケるとの恐怖心が、老いる人たちに襲い掛かっている。「預金2000万円ないと95歳まで生きられない」とする金融庁の脅し作戦は、ギャンブル投資での資産作りを奨励している。追い詰められる高齢者の心情は複雑である。

<人権派弁護士の愛唱歌「あじさいの歌」を合唱>

 聞いてばかりいるのも癪なのでリクエストした。人権派弁護士で知られた遠藤順子さんの愛唱歌「あじさいの歌」である。

 倒産寸前の東京タイムズの給与は低すぎた。それでも日中友好活動のお尻をたたいてくれた大恩人が、平和軍縮派の宇都宮徳馬さん、宇都宮さんが93歳で亡くなった後、代わって支えてくれたこれまた大恩人が遠藤弁護士。

 彼女は、中央大学の渥美東洋ゼミ1期生で、かつ大学3年で司法試験合格の最優秀生で、大学内でも特別に注目を集めていた。彼女の支援なくして100回も中国と往復することはできなかった。

 しかも、人権派・正義派はやくざに屈しなかった。アベ自公の戦争法制に対して、地元の越谷市の市民運動リーダーとして死の直前まで戦っていたようだ。彼女の純粋な心根が、あじさいの歌詞に表現されている。

 

 もう一つのリクエスト曲は、護憲派首相の大平正芳さんの「北帰行」だったが、こちらは採用されなかった。

<自分を誉めたい足で書いた貴重本>

 それにしても藤浪さんが思い出させてくれた「塀の上を歩く金バッジの面々」は、われながらすばらしい本だと今でも思える。誰も書けない、だれも怖くてかけない真実の活字の羅列である。

 

 政治記者20年の人脈で政治屋の内情を暴露したもので、これは日本の民主主義に相応の貢献をしているはずである。

 恩田さんも偉かった。彼は週刊文春の記者から出版に手を出した。週刊誌では、手の届かない政治屋の金つくりの秘事を、政治記者20年の筆者に押し付けてきたものである。

 文字通りの足で稼いだ成果である。

<政治屋ばかりの自民党と毒饅頭の公明党か>

 そこから永田町を目撃すると、政治家がいない。恥を知る廉恥の政治家がいない。戦争を口にしたり、女買いに狂奔した東大・経済産業省・維新・松下政経塾の丸山穂高に、さもありなんと頷くばかりである。

 

 金目当ての政治屋が、議員辞職の決断をするわけもない。金目当ての国会議員・地方議員ばかりの日本に前途があろうはずもない。

 ともかく自民党は政治屋の政党であって、国民政党ではない。そんな自民党に貴重な一票を投じる公明党創価学会を評価できるわけがない。太田ショウコウや山口那津男らには「安倍の毒饅頭」が降り注いで、身動きができないと見られている。

<88歳の日下部さんは千葉県老人(生涯)大学校での出会い>

 正月の年賀状をいただいた香取市八日市場の日下部行明さんに早めの暑中見舞いを出したら、昨日、丁重な返書が届いた。

 なんと日下部さんとの出会いが30年前だった、と知らせてくれた。出会いの場所は、当時の老人大学校である。ここで10年ほど講師を引き受けた関係で、多くのお年寄りと知り合いになったのだが、日下部さんはその一人だった。現在は生涯大学校と呼んでいるという。

 

 88歳になる日下部さんは、毎年の年賀状で激励してくれる。多分、彼も拙本を何冊か読んでくれている。本を通しての友情も切れないものだ。

 

 お年寄りは、子や孫のために現在を案じている。シンゾウや財閥には、それがない。暴政にも気づこうとしない現在の日本国民であるが、そこでは政治家不在が横行していて、当事者が一向に恥じない。

2019年6月8日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)