太陽を全ての人々に!<本澤二郎の「日本の風景」(3899)

<エザワフルーツランドのブルーベリーが教えてくれる!>

 11月7日の土曜日、木更津市の奥座敷の無農薬果実・ブルーベリーの里に足を運んだ。もう杉と竹林の山林を開墾して20数年の歴史を刻んでいる、エザワフルーツランドの秋を園主ともども散策した。園主の話で印象に残った言葉は、太陽のことだった。「今年初めて太陽の偉大さを学んだ」と神妙な面持ちで述懐した。


 頷くほかなかった。今年の春先は雨、雨と曇り日が多かった。美味しい味のブルーベリーは実らなかった。気候変動である。地球規模で課せられている、21世紀最大の課題である。核や石炭・ガソリンによるエネルギー経済から、1日も早く帆船・日本丸で抜け出す人類でなければ、地球も人類も滅びる。これに抵抗してきた米トランプ政権NOは、当然のことである。バイデン次期大統領のパリ協定復帰に、多少は期待したい。

 欧米も中国も、脱ガソリン車にフルスピードで切り替えている。石炭発電もダメだ。


 ところで日本政府は、太陽を民衆の全てに照射する重い責任を負っているのだが、現実はごく一部富裕者のみに限って、多数の貧者を委縮無気力化させて、平然と「国民のための政治」という空念仏を合唱している。



<弱者・貧困層に特別照射が政治の根本>

 次期米大統領のバイデンは、富裕層に課税の強化を打ち出している。社会の均衡を保つ公約で、トランプの再選を阻止した。


 日本は森・小泉の清和会政治以来、富裕層1%に特化した悪政を敷いて「経済は良くなった」と出鱈目な宣伝をNHK以下のメディアを使って、戦前の大本営のような報道に徹してきた。


 国粋主義まみれの安倍内閣7年8か月の政治は、いまも菅内閣によって継続、変化はない。後者は憲法違反の戦争三法に反対した、日本学術会議の真っ当な学者6人を切り捨て、学問の世界にも抜刀、新たな憲法違反に突進している。


 ようやくにして、杉田和博という公安のボスの仕業であることも判明、野党の追及に菅のみならず、本人は隠れ逃げ回っている。学問の自由にも、太陽どころか黒雲で覆い潰そうという魂胆なのであろう。

 振り返ってみると、年金生活者のみならず、非正規労働者や失業者に対して、全く太陽から遠ざけて平然としている政府である。貧困の社会を報道させないようにもしている。大魔神・電通の正体発覚で判明してきている。


 政治とは、暗闇に光を当てることである。対して清和会政治は、あたかも戦前の国家主義が跋扈、反対する善意の人々や識者を、杉田の魔剣で切り捨てている。この事実に、だれか弁護できるであろうか。


<安倍・菅の財閥・電通・富裕層向けは売国奴政治>

 清和会政治は、規制改革と称して、ドリルで民衆への福祉政策を排除して、富裕者1%向けに開放、莫大な利益を、言うところの彼らの身内に配分することである。モリカケ事件が典型であろう。


 これの実行部隊が、21世紀の特務機関の電通である。五輪は電通の、電通による、電通利権のためのものである。青少年の健全な育成とは、無縁なのだ。それゆえに、コロナ禍で人々の命が危険にさらされている中でも、強行するのだという。


 IOCを完ぺきに抱き込んでの暴政の最たるものだが、新聞テレビは正論を吐けない。人々の決起を抑え込むための世論操作に徹して、怒りや不信のマグマを溜め込んで恥じない。


 電通と杉田和博のコンビに、人々はこのまま振り回されていくのであろうか。アメリカの無党派層・弱者は、決起して政変を可能にした。日本でも可能だろう。


<Go Toキャンペーン・ふるさと納税は金持ち優遇策>

 菅が打ち出したという「ふるさと納税」のことについて、正直、何のことかわからなかった。直接触れるとわかるのだが、どうみても関係などなかった。


 「とんでもない。ふるさと納税は金持ちのためですよ。庶民は全く関係はない」と教えてくれた人物は、元自民党議員秘書のA君だった。同じことが「Go To」キャンペーンである。貧者には無縁である。


 近くにゴルフと旅行に明け暮れている優雅な御仁が、持病持ちにもかかわらず「Go Toトラブル」に出かけた。調べると、税金の政府援助旅行費は、べら棒に高く、貧者には手が出ない。「Go Toイート」も同様なのだ。


 安倍・菅太陽は、すべて富裕層向けである。


<「コロナ禍になぜ自衛隊を活用しないのか」と怒る園主>

 話題を冒頭のブルーベリー園に戻すと、もう一つ大事な指摘を受けた。それは混乱の極みともいえる日本政府のコロナ対策であるが、それは「細菌兵器の防護服を着る自衛隊の出番ではないのか。なぜ自衛隊を出動させないのか」との提言である。


 確かに正論である。そもそも新型コロナウイルスについて、今も米国の細菌兵器庫から漏れ出したもの、との情報もある。源流は731部隊である。余計に「防護服」着用の自衛隊出動の出番であろう。


 イージスアショアなる有害無益の利権武器に執着する安倍の実弟・岸信夫や河野太郎、小野寺、中谷らは、利権アサリを止めて、コロナ対策に知恵を出してはどうか。


 医療崩壊を壁にしてのPCR検査をしないようにしてきた安倍・菅政治は、コロナに目を向ける必要がある。


<ブルーベリー園で実った秋のミカンは太陽のお陰>

 わずかな家庭菜園をしていると、太陽の有無が決め手となることが理解できる。今年は借りた畑で、立派な骨格の大豆を育てたものの、実がならなかった。太陽不足が原因だった。今期で借地を返上するしかない。


 ところで、ブルーベリー園の一角で、秋のミカンがたわわに実っていた。海抜80メートルほどの頂上は暖かい太陽がよく当たるためだった。園主ともどもミカン狩りを楽しんだ。


 大粒の銀杏の実もいただいた。夏物のブルーベリーは駄目だったが、秋のミカンとイチョウは太陽の恩恵を受けたのだ。


 政治の根本は、正論を非難する野蛮な物書きを育てるのではなく、弱者に光を当てる血税使用が不可欠だ。反省謝罪を忘却した電通・財閥の爆走は、必ず天が雷を落とすだろう。

2020年11月9日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

哀れ菅義偉ジャカルタ会見<本澤二郎の「日本の風景」(3898)

<外国初訪問先での手の込んだ初会見の驚くべき内幕発覚>

 読んでいて泣けてきた!これが日本国首相なのか、と。ため息どころではない。自分の言葉を持たない、奇怪な機械人間?以下に、見事な元共同ジャカルタ支局長の詳細記事を貼り付けることに成功した。


 なぜ外国訪問をASEANにしたのか、その本当の理由も分かった。ジャカルタでの菅義偉会見は、歴史に残るだろう。前任者の手口でもあったのだ。


<自分の言葉を持たない首相=質問者特定=質問内容特定>

 インドネシア・ジャカルタでの初めての内外記者会見は、日本外務省が総力を挙げての、統制会見そのものだった。自分で語れない首相のためとは言え、質問者を事前に特定、同時に質問内容も事前に特定、それ以外の質問を禁じていた。これを欧米の先進国でやろうとすれば、大騒動になったであろう。


 役人が用意した原稿の棒読みは、安倍晋三で承知していたが、菅義偉もそれをより完璧に行っていた。菅はそれでも、ベトナムのハノイ大学での講演で、ASEANをアルゼンチンと公然と口走っていた。


<検閲・言論統制会見に地元記者も仰天>

 元共同通信の浅野健一元ジャカルタ支局長は、目の前の原稿を棒読みするだけの首相に違和感を抱いて、取材を開始したらしい。ジャカルタの記者たちの驚きのコメントに「これはひどすぎる」と感じて、外務省などにも質問したが、回答なし。答えられるわけがない。


 「日本の首相会見が検閲される。統制質問ではないか」との声を聴いてしまったのだ。恐ろしい日本の外務省と、恐ろしい低過ぎる首相の正体を、ハーバービジネスオンラインに投稿したらしく、それが昨日のMicrosoftニュースに掲載されていた。


<御殿女中!日本外務省が税金泥棒返上!?>

 拉致でも北方領土問題でも成果ゼロの霞が関外交について、専門家は御殿女中と揶揄したものだ。何もしないで高給を懐に入れる外交官を税金泥棒とも酷評してきた。

 「ようやく菅の誕生で、働く舞台が出来たと安堵している外務省」というのだが、それにしても落ちるところまで落ちたものである。

2020年11月8日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

{菅首相、就任以来初の外遊先インドネシアで初会見}

 菅義偉首相は1018日から“外交デビュー”先のベトナム・インドネシアを歴訪。最終日の21日午後にジャカルタで開いた「内外記者会見」で、日本とインドネシアの各2人が質問に立った。このときの現地記者2人の質問内容は、外務省国際報道課が事前提出させた “サクラ”質問だったことが2人の証言で明らかになった。

 国家指導者の記者会見(press conference)は文字通り、政治家と記者が議論を交える真剣勝負の場でなければならない。しかし菅首相の会見は、中世の王や将軍の“ご意見拝聴”の場に成り下がっている。これを見たインドネシアの記者たちからは、「日本政府の参加記者への対応は検閲にも当たり、報道の自由を侵害している」という抗議の声が上がっている。

 叩き上げの実務家で外交に弱点があると言われてきた菅首相の初外遊を成功させるため、外務省は920日ごろから、初の外遊先を第2次安倍政権発足時と同じ東南アジア諸国連合(ASEAN)の2か国(安倍氏は今回の2か国とタイを訪問)に決定。「殿に失礼がないように」と、現地の大使館を通じて、記者会見で恥をかくことのないよう周到なメディア対策を取っていたのだ。

 菅首相がジャカルタでの宿泊先のフェアモントホテルで開いた会見については、首相官邸ウェブサイトに「ベトナム及びインドネシア訪問についての内外記者会見」と題して、全記録と動画がアップされている。

 会見は午後010分から始まり、NHKの正午のニュース枠で中継された。菅首相の会見は916日に30分間、就任挨拶の会見をして以来。今回も、プロンプター(原稿映写機)は使わなかった。

 菅首相は冒頭発言で、「ベトナムは今年の東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国、インドネシアはASEAN最大の人口、国内総生産(GNP)、面積を持つ国として初訪問先に選んだ」と述べた。 また、防災対策のためにインドネシアへ新たに500億円の円借款供与を表明、最近の台風被害に緊急援助物資を届けたと述べた。

 首相はさらに、「我々が、助け合い、そして、絆を強めていけるのは、ASEANと我が国が、このインド太平洋という地域において、法の支配、開放性、透明性といった基本原則の実現を共に目指しているからだと思う」と強調した。

 その後、中国を念頭に、南シナ海での力と威圧による緊張を高めるいかなる行為にも反対し、国際法に基づく法の支配の貫徹、平和的解決に向けて努力すると訴え、「私自身の首脳外交を進める」と締めくくった。

事前に現地記者を呼び出し、会見で質問する内容を確定していた!?

 官邸報道室が内閣記者会の幹事社の記者らから質問事項を集め、秘書官ら官邸官僚が回答を用意し、首相は問答集を手元に置いて答えるのというのは、安倍政権時から行われていた。今回、海外でも同じことをやったのだ。

 菅首相はこの会見で、同行の内閣記者会(正式名は永田クラブ、官邸クラブとも呼ばれる)の同行記者2人の質問に答える際、ずっと目を落として答えていた。同行記者は、外務省と官邸報道室側に質問事項を事前提出したと思われる。記者との質疑応答全体が“やらせ”だった可能性が高い。

 菅首相の会見で質問した『アンタラ通信』(国営)のゲンタ・テンリ・マワンギ記者と英字紙『ジャカルタ・ポスト』のディアン・スプティアリ記者によると、外務省国際報道課の鴨志田尚昭国際報道官が首相就任後の920日ごろ、在インドネシア日本大使館と協議して会見に参加するインドネシアの報道機関を決定したという。

 鴨志田氏は大使館のローカルスタッフ(現地職員)を通じ、各メディアへ通知した。その後、鴨志田氏は参加が決まった記者全員に、質問事項の提出を要請。外務省が提出された質問内容を検討し、会見2日前の1019日に記者を個別に呼び出し、「1対1」で、会見で聞く質問事項を確定した。その際、「許可した質問内容への追加や変更を行わないように」と命じていた。

すべての質問に対して、用意された台本を読み上げた菅首相

この内外記者会見では、山田真貴子・内閣広報官(長谷川栄一氏の後任、前総務審議官)が司会を務めた。山田氏は「指名された方は、スタンドマイクに進み、所属と名前を言ってから質問ください。マスクを着用ください」と言って、「では、2列目のこちらから見て左から2番目の方どうぞ」と指名した。ランダムに当てているようにふるまっていたのだ。

 指名されたフジテレビの千田記者が「総理はインド太平洋構想を強調しているが、王毅中国外相は、『インド太平洋版の新たなNATOの企てだ』と批判している。中国への海洋進出に懸念がある中、どう進めるか。日中韓サミットはどうするか」と聞いた。

 菅首相は「特定の国を対象としていない。(新たな)NATOを作る考えはない。日韓間の外交の一つひとつには答えないが、日中韓サミットの日程は決まっていない。日本企業の差し押さえ資産が現金化されれば、日韓関係について深刻な事態を招くので絶対避けなければならない」と答えた。回答はすべて台本を読んでいるもので、首相自身の言葉ではない。

 広報官は「次は外国プレスの方。同時通訳になる」と述べ、「それでは、最前列の左端にお座りの方」とその場で指名しているようにふるまったが、芝居が下手だ。

 指名を受けた『アンタラ通信』のマワンギ記者が「今回の初めての2か国訪問の目的は、安倍前総理の流れを継承するものか。あるいは、総理御自身の掲げる日本の外交方針に基づくものか。また、総理の外交方針は、特に南シナ海における中国の強い影響力及び『自由で開かれたインド太平洋』構想に関する日本の立場を踏まえたものか」と聞いた。

 菅首相はマワンギ記者が質問している時から、台本に目を落として回答を読んでいた。そして「自由と法の支配を求めることは、私の政権においても変わらない」などと答えた。

 広報官は「それでは次に日本のプレスの方、どうぞ」と言って、『朝日新聞』の伊澤記者が指名され、「内政について聞く」と述べた。日本学術会議の任命拒否問題。原発汚染水問題、臨時国会に臨む方針を聞いた。

 菅首相は伊澤記者への回答も、用意された問答集を読んだ。

「学術会議は国の予算を投じている。出身やそういうものを総合的、俯瞰的に判断した。前会員が推薦された方がそのまま任命された前例踏襲でいいのかを考えた」

 広報官は「終了予定の時間が来ている。次で最後にしたい。恐縮です」と述べ、『ジャカルタ・ポスト』のスプティアリ記者が質問に立った。

「南シナ海やナツナ島の問題を踏まえ、日本はインドネシアとの間で、どのように海洋安全保障に取り組んでいくのでしょうか。日本自身が中国への対処から得た教訓は、何ですか。また、インド太平洋地域における日米豪印の枠組みにおいて、インドネシアはどのように位置づけられていますか」

 菅首相は質問の時から台本を見ていて、次のように回答を読み上げた。

「力と威圧の動きには毅然と対処する。南シナ海には、法の支配、国際法に基づく解決を目指す。防衛装備品の技術移転を地域に進める」

 結局、内外記者4人への回答は全部読み上げだった。会見は036分に終わった。たった26分の会見だった。

確信した「ヤラセ会見」

NHKはスタジオで大谷暁・政治部記者が菅首相の発言を広報し、「菅総理は夜には帰国し、26日からカンナイカクとして初めての国会に臨む」と言って、アナウンサーが「スガ内閣ですね」と注意して、「スガナイカク」と言い直した。

 菅首相はハノイの大学での講演で「ASEANのみなさん」と言うべきところを、「アルゼンチンのみなさん」と読み間違えた。NHK記者も首相も、自分の言葉で話していないから信じられないミスをするのだろう。

 筆者は1989年から1992年まで共同通信ジャカルタ支局長で、ジャカルタ外国特派員協会の副会長を2年務めた経験がある。スハルト軍事政権の絶頂期だった。33年続いたスハルト独裁体制は1998年に崩壊した。

 テレビで4人の記者と菅首相のやりとりを見て、この会見は首相側が質問者を決めた完全な“やらせ”会見だという確信をもった。会見の問答集は通訳にも事前に配布されていたと思われる。そこで、私は会見で質問したインドネシアの記者2人に、「会見で質問する内容は事前に決まっていたか」「菅首相の回答はどうだったか」などを聞いた。

 2人によると、記者会見場に入る取材許可(プレスID)が得られた記者は、全員がコロナウイルス感染の検査を受けて陰性証明を示す義務もあった。

 質問できた2社以外で、会見に参加できたインドネシアのメディアは、リパブリカ、メトロTVだけだった。英ロイター通信と仏AFP通信(カメラ記者)所属のインドネシア人記者も出席した。

 その他、外務省が取材許可証を出した地元報道機関の記者はワーキングルームで映像、音声を視聴できたという。ブリーフィングの場所も設けられたが、取材許可が得られた現地メディアの記者は限られていたため、参加できなかった記者は、生配信される記者会見の映像を自宅や会社で見ていたという。

 首相の国内の記者会見の場合、内閣記者会が主催で、官邸報道室が実務を代行している。一方、外遊中の首相の記者会見はすべて現地の日本大使館と外務省が仕切っている。ボゴールの大統領宮殿での取材は、インドネシア政府の国家官房(Sekretariat Negara)が許可を出した。

現地記者が証言「許可した質問内容の追加や変更は行わないようにと言われた」

『アンタラ通信』のマワンギ記者は筆者の取材に次のように答えた。

「記者会見の1か月前に日本大使館から、どの報道機関が参加するのかは決められていた。事前に質問を提出するように言われていたので、日本の外務省が質問内容について検討したようだ。

 記者会見の2日前に、日本の外務省側と報道機関の間で個別に、つまり11での打ち合わせがあり、外務省・大使館が許可した質問事項を確認した。

 この説明の時には、私が実際に記者会見で質問できるかどうかは確定していなかったが、もし私が質問することになった場合には、許可した質問内容への追加や変更を行わないようにと言われていた。

 菅首相は私の質問に回答する際、手もとの紙を見ていたようなので、すでに回答は準備されていたのだろうと思った。首相の回答はごく当たり前なもので、ボゴールの大統領宮殿での記者発表において読まれた内容と重複している部分もあった」

 また、『ジャカルタ・ポスト』のスプティアリ記者は「記者会見の前に質問内容を提出するよう言われたが、日本側からは私の質問を記者会見で必ず受けつけるという確約はなかった。菅首相はすでに質問について説明を受けていたと確信しているし、私の質問への回答も、会見冒頭で述べた内容の繰り返しだった」と述べた。

官邸、外務省、内閣記者会に質問するも無回答

 筆者は1022日、菅首相、富永健嗣官邸報道室長、山田内閣広報官宛に、ジャカルタでの会見について以下のような質問書をファクスで送った。

首相に同行した報道機関名と記者の数は

同行記者は内閣記者会の常勤幹事社19社だけか

コロナ禍の最中の首相の外国訪問でのメディア対応で、これまでとの違いがあるか

政府専用機に“箱乗り”した記者の航空運賃、ホテル代の手配・費用はどうしたか

ジャカルタでの「内外記者会見」はどこの主催か

会見の予定時間、質問の仕方などは事前に同行記者団、内閣記者会と協議したか

司会者は4人を指名し、菅首相は回答の時に、終始、手元の文書を読んでいたように見えたが、参加記者から質問事項を集めていたのか

 1030日には、外務省報道課にも以下について聞いた。

「菅首相は4記者の質問に対する回答の時に、手元に置かれた文書を読んでいたが、内外の参加記者から事前に質問事項を集めていたのか」

「インドネシアメディアの参加記者の質問について、外務省が大使館を通じて、質問事項の提出を求めた事実はあるか」

「会見の2日前の1019日、外務省側と現地報道機関の間で、外務省・大使館が許可した質問事項を確認し、会見で質問が許された場合、質問の変更はできないと通知した事実はあるか」

 外務省から回答期限の112日までに回答がなかったので、112日夕方に質問書を再送して回答を求めたが、まだ回答は来ていない。

 筆者は1022日、内閣記者会にも7項目の質問書を送ったが、幹事社のNHK・西日本新聞は「内閣記者会は関与していないため、お答えしかねます」と回答した。内閣記者会が関与していないとすれば、同行記者の選定などはどこが関与したのだろうか。

 外務省がジャカルタで行ったような事前の記者からの質問取りは、欧米先進国のメディアに対してはしないだろう。菅首相はインドネシアをASEAN最大の国と持ち上げたが、インドネシアの報道機関を見下しているから、こんな質問統制を平然とやったのではないか。

 日本はアジア太平洋戦争で、1941年から45年までインドネシアを侵略・占領した過去がある。欧米列強の帝国主義から解放・独立させると騙しての植民地化だった。

 筆者は19892月から19927月まで共同通信ジャカルタ支局長を務めた。その間、竹下登、海部俊樹、宮沢喜一各首相がインドネシアを訪問したが、これほど露骨なやらせはなかった。

日本の報道は、菅首相の初外遊を評価した“大本営発表”報道

 元NHKジャカルタ支局助手、メトロTV記者、米国の声(Voice of America)インドネシア支局長を経て現在フリージャーナリストのフランス・パダック・デモン氏は「記者会見の前に質問事項を集め、誰が質問するのか決めるのは、本来はしてはいけないことだ。取材・報道の自由の原則に違反している。インドネシアで今回の日本政府のようなやり方をする国というのは、私が知る限りはない」と語る。

「スハルト大統領の時代には、このように記者会見前に政府と報道陣がやり取りすることはあった。当時は、記者会見前にインドネシアの情報省や内閣官房の職員が、『誰が会見で質問するのか』について事前に調整するということがあった。

 ただ、質問の詳細まで事前に聞かれることはなく、会見の意図に沿う質問をするように、とだけ伝えられていた。しかし今、ジョコ・ウィドド大統領になってからは、記者会見では誰が何を質問しても良いようになっている」(フランス氏)

 筆者は『日本大使館の犯罪』(講談社文庫)で、ジャカルタ支局長時代に訪問した竹下登、海部俊樹、宮沢喜一各首相の訪問について書いているが、菅首相の初外遊に関する報道は、当時よりもずっとひどい。まさに“大本営発表”報道だった。

 日本の報道では、菅首相の2か国歴訪を「今回の2か国訪問は、米中対立の中、絶妙なバランスで行われている」(1019日のテレビ朝日「報道ステーション」で、太田昌克共同通信編集委員)「無難な初外交だった」(1025日、TBS「サンデーモーニング」で姜尚中東大名誉教授)などと評価している。

 しかし、インドネシアでは菅首相を批判する声も少なくなかった。マヘンドラ・シテガル副外相は、菅首相訪問に関連して1014日、「これまでコロナ・パンデミック問題において日本とインドネシアの間には具体的な協力が何もなかった」と批判。また、菅首相の会談の際、ジョコ大統領は「インドネシアからの農業・林業・漁業の生産物の日本への輸入許可が制約されている」という不平を述べた。しかし、菅首相からの反応は特になかった。

虚しく響く菅総理の「法の支配、開放性、透明性」という言葉

『ジャカルタ・ポスト』のコルネリウス・プルバ上級論説委員は1019日の記事で、マヘンドラ副外相の見方を以下のように紹介した。

ASEAN首脳会談には中国も招かれている。中国の軍事力強化は事実だが、米、豪、インドと組んで中国との闘いを構える日本の戦略は警戒が必要だ。菅首相の『自由で開かれたアジア太平洋』構想は、コロナ禍にあるASAEAN地域に住む人々の生活を無視し、地域の安全保障を不安定化し、緊張を強める危険性が大きい」

 フランス氏はこう提言する。

「日本はインドネシアとの関係をより強固にするために、中国で活動する数十の日本企業の拠点をインドネシアに移すと約束している。しかし、インドネシアの1998年の民主化以降、日本とインドネシアの関係は弱まっている。

 その一方で、中国と韓国はインドネシアでの存在感をますます強めている。日本は、中小企業への投資、芸術、ドラマ、映画、音楽など、文化的な外交、大学間の協力などでインドネシアとの関係を活性化する必要がある」

 菅政権のインドネシアでのメディアコントロールは、菅首相が謳う「法の支配、開放性、透明性」に反するのではないか。共同通信論説副委員長から、首相補佐官(政策の検証担当)に転身した柿崎明二補佐官に、ジャカルタ会見の検証をしてもらいたい。

 また、菅首相は官邸での記者会見は、就任時に30分の挨拶会見を行っていないが、国際標準の記者会見を定期的に開催するよう強く求めたい。

<文・写真/浅野健一>

【浅野健一】

あさのけんいち●ジャーナリスト、元同志社大学大学院教授

日米醜態競争<本澤二郎の「日本の風景」(3897)

<哀れ菅首相の日本学術会議6人斬り説明不能>

 昨日午後、運動不足を少しでも解消しようとして、亡き母の実家である山奥の部落を目指した。歩いていると、懐かしい祖父母が頭に浮かんできた。4、5歳のころであろうか。一人で何度も、出かけ、小学生になっても繰り返した。当時は電気はなく、ランプ生活だった。唯一の喜びは、朝ご飯に祖母が、放し飼いの鶏が生んだ新鮮生卵に、庭先のネギを刻んで、醤油をかけてくれた栄養たっぷりの、当時としては最高級の卵ご飯に舌鼓を打ったことだ。譬えようもなくおいしかった。


 この山道には、米軍機B29に撃墜された日本軍戦闘機の残骸が、道端に無残に放置されていたものの、それが何なのかさえ理解できなかった。若い未来ある航空兵の悲劇的死について、考慮する能力もなかった。誤れる国の指導者の存在さえも、理解不能だった。


 散歩から帰宅して、思い出したようにラジオをかけると、参院予算委員会で共産党の小池晃が、日本学術問題について菅に噛みついていた。映像を見ていた国民がどれくらいいたろうか。例によって、しどろもどろの出鱈目答弁に質疑は何度も止まった。


 ラジオからも、菅の無能答弁が耳に飛び込んできた。テレビ観戦者の菅評価は、推して知ることが出来よう。「この程度の日本国首相か」「いま首相に手を上げたことを猛省しているのではないか」「無能無力の菅義偉がかわいそうだ」という感じを抱いてしまった。まさに醜態である。



<往生際が悪すぎる権力執着魔神のトランプ哀れ>

 ワシントンでは、再選に失敗したドナルド・トランプが、同じように権力にしがみつこうとして、往生際の悪さを世界に発信していた。

 誰もがトランプの再選を信じていなかったものだから、余計に彼の醜態に付き合わされている国民も哀れだ。昨日も書いたのだが、財閥富裕層向けの「アメリカ・ファースト」に中間層も落下、貧困層は政治から見放されていた。したがって、そうした弱者が決起した異常な大統領選挙だった。


 無党派層・弱者が決起した選挙なのだから、票数でジョー・バイデンが上回ることになる。不正選挙さえなければ、バイデンの勝ちだが、トランプは証拠もなく法廷闘争へと持ち込んで、政治危機を増大、事態を混迷化させている。


 不動産屋の習性なのであろうが、彼の対応は、到底世界から尊敬されることはないだろう。哀れトランプである。



<野球なら直球も変化球も空振り三振の日本国首相>

 日本学術会議問題に対する菅答弁を、野球に例えると、バッターボックスの菅選手は、相手のピッチャーの素行調査までした上で、慎重に構えたものの、

直球も変化球も見逃しの三振。

 ホームランはおろかバントで打ち返すこともできなかった。


 過去に田中角栄は「地方議員上りは、地元でのドブ板選挙、手練手管はうまいが、国家ビジョンがない。国政は無理だ。国のトップに立つことは出来ない」と決めつけていたが、日本国憲法を尊重擁護する義務が課せられていながら、破憲首相では話にもならない。


 「菅は一度も憲法を読んでいない。読んでいれば、人権主義・学問の自由への政治介入という、憲法違反をするわけがない。官房副長官の杉田も雲隠れしているではないか。公安・警備の杉田の破憲判断を、そのまま受け入れた菅は、文句なしに首相失格。辞めて秋田の土になるしかない」とも酷評されている。



<尊敬されない破憲首相と加憲ナツオの政治責任>

 菅を尊敬する日本人がいたら、手を挙げてもらいたい。おそらくいないだろう。彼は、既に官房長官時代に自爆しているではないか。東京新聞の望月記者に見破られている。


 ただし、支持する人たちは一部に存在する。支援勢力は財閥1%・電通大魔神である。電通は、IOCのバッハという利権アサリの弁護士を抱き込んで、来年7月の五輪を強行する構えである。


 電通が死力を尽くして、人の命よりも、利権アサリに突進する姿に、改めて大魔神の野蛮すぎる実力に驚愕するばかりである。


 問題の6人斬り事件に沈黙している加憲のナツオも、墜落寸前と今朝ほど連絡が入ってきた。大阪都構想では、自ら大阪入りして、それまで逃げ回っていた4人の公明党衆院議員を連れ出して、維新に忠誠を見せつけたのだが、それでも公明党創価学会の半数以上が反対して、ナツオを撃墜した。


 結果、ナツオの責任問題が、信濃町で表面化しつつあるという。当然のことであろう。太田ショウコウと共に、あろうことか戦争三法を強行、カジノ強行にも手を貸した、やくざ弁護士の正体をさらけ出したのだから、因果応報といえるだろう。



<米国民主主義も壊れてしまっている!>

 トランプ敗北を占いで知ったものか、安倍晋三はそそくさと病気理由に退陣して、多少は安堵しているようだが、彼はおそらく改憲による日本分断の先輩として、アメリカ分断をトランプに伝授したものか?アメリカンデモクラシーは大統領選挙で危機に瀕している。


 トランプの暴走に対して、足元の共和党内部からも批判が出ている。米産軍複合体が水面下でどう動くのか、注目したい。連邦最高裁と米国下院をも巻き込んでの泥仕合を、世界に発信するのであろうか。


 ともあれワシントンの内外政は、心臓部が壊れた時計そのものである。公正・公平な社会であれば、経済衰退・コロナ禍でも乗り切ることが出来るが、どうなるのか。人類がつかんだ史上最高の民主主義が、日米ともに危機に追い込まれている。

2020年11月7日記(東京タイムズ元政治部長・政治評論家・日本記者クラブ会員)

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